1.平凡な私と美人さん [ 1/6 ]

『あっ、教科書忘れた…

蓮ちゃんに借りに行くか』


普段は借りに行ったりはしないんだけど


数学ばっかりはないとどーしよーもないんだよな…


あー、学校ではあんまり蓮ちゃんの近くに行きたくないんだけどなぁ


蓮ちゃんっていうのは私の幼なじみの柳蓮二のこと


頭が良くて、スポーツもできる


しかも、顔も整っているときた


つまりモテるのだ


そんな、モテモテな人の近くにいくら幼なじみといってもこんな平凡な私がウロウロしてたら


確実に女の子に目を付けられるに決まっている


だから、学校ではなるべく蓮ちゃんには近付かないようにしているのだ


あー、怖い怖い


そんなに怖いのなら他の友達に借りに行けって話なんだけど


あいにく友達をつくるのが苦手な私は他のクラスに教科書を借りられるほど



仲のいい友達がいない


一番仲のいい友達のなっちゃんこと加藤夏樹は同じクラスだから教科書を借りれないし…


忘れないようにしてたのにと忘れてしまった今朝の私を恨みながら


重たい足を蓮ちゃんのクラスへ向けて踏み出した





『蓮ちゃん、数学の教科書貸してくれ…

あれっ?』


極力目立たないように蓮ちゃんところに教科書を借りに行くと


どこかで見たことある感じがする穏やかな雰囲気の男の子がいた


綺麗な男の子だなぁ


一瞬女の子かと思った…


平凡な私とはかけ離れてるよ


蓮ちゃんは「そろそろ来る頃だと思っていたぞ」といってすんなり貸してくれた


もう、用事はすんだし蓮ちゃんにありがとうといって帰ろうと思っていたら


さっきまで黙っていた美人さんが話だした


「ねぇ、柳
さっき話してたのってこの子のこと?」


えっ?話してたってなに!?


いったい何をはなしたの!?


蓮ちゃんも「あぁ」じゃないよっ!


それを聞くと美人さんは私を下から上まで眺めるように見た


蓮ちゃんはいったい何を話したのさぁ!


お願いだからただの平凡な幼なじみとかにしてよ


美人さんも「ふーん」じゃないよー!


もう、何なんだっ!


ただ教科書を借りに来ただけなのに!


美人さんは何かを決意したように私の前に手を伸ばしてきた


『えっ…?』


急な行動に私の理解が追いつかなかった


美人さんはニコニコしながらまだ手をのばしている


これは、手を取れってことなんでしょうか?


いや、てもこんな美人さんがこんな平凡な私に手をさしのべているってどうゆーことだ


いや、騙されるな鹿山麻菜


私が手を伸ばしたら向こうは引っ込めて「バカがみる」的な展開が待っているかもしれない


うん、きっとそうだ


私は騙されないぞ!


私がいつまでたっても手を出さないと


美人さんは顔をしかめた


怒っちゃったかな…?


そう思った瞬間美人さんは私の手をつかんで自分の手と握手をさせた


えー、ビビるんだけど…


「俺のことは、知ってると思うけど幸村精一だよ

これからよろしくね、鹿山さん♪」


『えっと、あ、宜しくお願いします

鹿山麻菜です』


「うん、宜しくね♪」


『蓮ちゃんは、この人に「幸村精一だよ!」…。

幸村君に何を話したの?』


「あぁ、お前が友達を作るのが苦手だと話したら

精一がお前と友達になりたいと言い出してな」


『…。「何話してんじゃー!とおまえは言う」…。はぁ』


まったく、蓮ちゃんはたまによけいなこと言うんだから…


それより重要な問題が…


『あ、あの、すいません

幸村君と私ってどこかであったことありましたっけ…?』


「「えっ!?」」


『えっ!?』


「麻菜、精一はお前と同じクラスだぞ」


「うん、しかも、俺鹿山さんの前の席だよ…?」


『えっ…?嘘だー!?』


「本当のことだ」


(「俺、人に忘れられたことないんだけどなぁ」)


(『す、すいません…』)



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