■ 3

女性用でしたのと同じように制服のポケットを探ってみると、三番目のロッカーで当たりが出た。
それはあの女性の霊の、生前の写真だった。明るい笑顔で写っている。美人だったんだと思うとなんだか暖かい気持ちになった。
でもあの人が欲しがっているのはきっとこの写真ではないような気がする。自分のバストアップの写真を持ってあの世に行きたいとは思わないだろう、多分。
普通は家族とか恋人とか、一緒にいたいけど連れていけない人の写真を欲しがるものじゃないだろうか。
そしてロッカーの隅に引っかかっている写真を見つけた瞬間、某緑の勇者のアイテムゲットのファンファーレが脳内に鳴り響いた。

スタッフルームの入り口のドアは相変わらずドンドンうるさかったが開いてみると誰もいなかった。厨房に急ぎ、うずくまっていた彼女に見つけた二枚の写真を見せた。

「これで合ってる?」

写真をじっと見つめる表情は長い髪に隠れて見えなかったが、俺の顔を見上げてきた彼女は嬉しそうに微笑んでいた。



「従業員と婚約してた人なんだって」

後日河合さんは彼女のことをそう言っていた。さすが に顔しかわからない人の墓を探すことはできないので、河合さんに頼んで辿ってもらった。河合さんの上司から廃業したレストランの店長になんとか連絡をつけ、彼女にたどり着くことができたらしい。

彼女の婚約者はレストランが潰れてしまってどこかへ逃げてしまったらしい。音信不通で今どうしているかわからない。借金があったらしく、逃げた後は彼女にもその火の粉が飛んだ。それを苦に自殺した、とはっきり言われたわけではないが、そうだったとしても何もおかしくはない。
それでも愛してたんだ。彼女は最期、彼と二人で笑い合っている写真を持っていきたがっていたくらいだから。

「ありがとう、喜多君」

写真は廃業したレストランの店長が、彼女の墓がある寺に奉納してくれたらしい。そしてそれ以来怪現象はぴたりと止んだようで、秋には河合さんが働く新しいレストランがオープンする。

ていうかよく考えたら俺がなんとかしたのってあの女の人だけだから他の霊まだいっぱいいるはずだけど大丈夫なのかな。

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