06

俺がこの世界に来てから、一月が過ぎようとしていた。
この村での生活に大分慣れて、猟師としてもフュージョニストとしてもやっている。
あの時の熊以来の大物はいないが、それなりにソウルエナジーは貯まる。
お陰で、低級フュージョンモンスターはレベルMAXだ。
今、中級のまでなら変身出来るようになった。

俺は今、隣村にいる。
理由はただ一つ。村の防衛だ。
「魔王が隣村を襲うつもりらしいだ!助けてけろ!!」と言われてしまった。
これは助けるしかない。
そして、初めての防衛戦が始まろうとしていた。

「うぉぉおお!」

掛け声と共に、強襲部隊が家を壊そうとする。
俺は、鉄球男と火炎瓶(?)男をメインに倒し続ける。
ある者には手刀を入れ、またある者は蹴り飛ばして気絶させた。
慣れてきたなと思う頃、村の入口ら辺から、高めの声がした。

「何だよ。大人の癖にだっらしねーなぁ
 蘭丸も手伝ってやるから、もっと頑張れよ!」

蘭丸……蘭丸……?
どこかで聞いたことのあるような……

「ガキが来ていい場所じゃないんだぞ。ここは
 とっとと母ちゃんのとこに帰れ」

「蘭丸はガキじゃない!」

「そうやってムキになるのをガキって言うんだよ、バーカ」

「くっそー!蘭丸よりちょーっと背が高いからって生意気だぞ!」

こいつ、からかうと面白い。
矢をいくつも放ってきたから弾き返す。
だが、こいつにばかり構っている暇はない。
次々と現れる強襲部隊を、倒さなければならないからだ。
俺は、蘭丸の矢を避けながら、強襲部隊を殲滅していく。

「図体でかい癖にちょこまか逃げやがって!」

「はいはい、背が高くてごめんねー」

「ちくしょー!あったま来たぞ!」

蘭丸は、くるりと一回転して、弓を空に向けた。
しまった。BASARA技だ。

「目ん玉かっ開いて、よーく見ろよ!」

無数の雷の矢が、俺に向かって降り注ぐ。
避けられるわけがない。
俺は、仕方なくアレをやった。

「(マッドブル!)」

矢の光に負けないくらいの光が俺を包むのと、
矢が俺に当たるのはほぼ同時に近かった。
だが、俺の変身の方が一足早かったらしい。

「ブルォォオオ!」

牛頭鬼に似た姿になった俺は、周りの空気を揺らすかのように吠えた。
それと同時に、蘭丸の矢で受けた傷が癒えていく。
マッドブルの技、"ハウリング"だ。

「な、何だよお前……!」

明らかな拒絶、畏怖。
勿論、俺のいた村の人や、隣村の人もこの姿を見てる。
だが、今の俺には関係ない。

「この村を……守る!」

禍々しい響きの声が、俺の口から出て来た。
俺は、人外的な速さで、蘭丸を掴み上げ、投げた。
かなりの勢いで落下したが、下は雪なので大丈夫だろう。
すると、今度は別の声がした。

「よくも蘭丸くんを……!
 覚悟なさい」

黒を基調とした着物に身を包んだ美女が、二丁の銃を構えながら言った。
二丁銃って、肩にかなりの負荷がかかるんじゃ……?
周りで、「魔王の嫁さんだべ!」という声がしていた。

「(魔王の嫁って、人間なのか)」

俺はかなり場違いな事を考えながら、戦闘体勢に入った。
やる気が起きないのは何故だろう。ウルだからなのか。
余計な事を考えていたからか、急に乱射撃を食らいそうになった。
よく見ると、ガトリングガンだ。

「("大蛇の吼"!思い出した……濃姫だ)」

急いで連続射撃をかわす。濃姫の柳眉が顰められた。
美人は何をしても綺麗だと思うのは俺だけか。

「ちょこまかと……!」

続いて、バズーカ砲が出てきた。
あれは危ない、"綿津見の嘆き"だ。
俺は急いでフュージョンを変える。

「お逝きなさい」「(イカロス…!)」

その言葉は同時だった。直後、凄まじい爆撃が起こる。
が、俺は間一髪上空に逃げた。
視界の端に家を壊そうとする強襲部隊が目に入る。
俺は、濃姫を放って、そっちに体を向けた。

「(ライトニング!)」

空気中のプラズマが俺の目の前に集まり、強襲部隊に雷となって降り注ぐ。
髪の毛の焼けた様な嫌な臭いがした。
上空でもこれだけ臭うのだから、地上は更に酷いだろう。
だが、俺は一瞬で降下し、翼と化した両腕で、濃姫を払った。

「くっ……!」

噛み締めるような悲鳴が聞こえた。
濃姫は蘭丸よりは幾らか速度は落ちるが、それなりの距離を飛んだ。
ここが雪国でよかったと心底思う。
そう思った後、俺はフュージョンを解いた。
解いたのとほぼ同時に、右腕を撃ち抜かれた。
パァンッという乾いた音ではない。ドガンッという重い射撃音だった。
撃ったと思われる方向を見ると、深紅のマントを身に付けた男が銃を構えたまま立っていた。

「うつけがぁ、余の前に立ちはだかるか」

「ま、魔王だ!魔王が来ただ!!」

禍々しいまでの殺気を出しながら、深紅のマントの男―魔王が俺を見据えていた。
止まらない血と痛みは、魔王の目を見た瞬間、消え失せた。

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