03
言われた向かいの家の中に入る。
本当につい最近まで使われていたらしく、生活用品がまだ残っていた。
布団もあるし、籠の中には着物も数枚入ってた。
「(あ、羽織りもある)」
無論、上等な物じゃない。
でも、身一つな俺にとっては最高の贈り物だった。
辺りをよく見れば、調理器具もあるし、砥石もある。
猟銃もある所を見るに、どうやら前の家主は猟師だったらしい。
「(なら、今この村に他の猟師はいるのだろうか)」
もしかしたら、いないかもしれない。
「(明日喜作に聞いてみるか)」
そう考えたあと、俺は床についた。
布団は、暖かかった。
ふと目が覚めると、もう薄日がさしていた。
外からは、人が歩く音が聞こえる。
俺はゆっくり起き上がって、軽く伸びをした後、立ち上がった。
特に腹も減ってないので、そのまま外に出る。
すると、ある農民と目が合った。
「おはよー」
「お、おはようだ
おめさ、喜作ん家さ行った人だべか?」
「あぁ、そうだよ
あ。あのさ、この村に猟師っている?」
喜作に聞こうと思ったけど、この人でいいや、と思い聞いた。
すると、「与吉が熊にやられちまったから……今はいねぇだ……」と言われた。
「じゃあ、俺が猟師やろうかな」
「!あ、危ねぇだよ!
最近おっかねぇ熊さ出るだ」
「オラ達も近寄んねぇべ」と言っているが、それだと蛋白質が取れない。
俺は、一つ名案を思い付いた。
「ねぇ。その熊の出る所、知ってる?」
「知ってるだが、どしたべか?」
「俺がその熊を狩りに行く」
俺の能力も試せるし、この村の人からも信頼を得れるかもしれない。
一石二鳥とはこの事だ。
目の前の男は心配をしてくれているが、俺は大丈夫だと言い聞かせた。
そして、場所を聞き出した。
「そうだべ、おめさん名前は?」
思い出したかのように聞かれた。
「オラは鷹吉っつーだよ。」とも付け加えられた。
「俺は、澪
んじゃ、鷹吉。俺、行ってくるから」
そう言って、俺は一度家に戻った。
すると、広げっぱなしだった布団の枕元に、一枚の紙と折り畳まれた何かがあった。
紙を見ると、こんな事が書いてあった。
<<いやー、ごめんねー
まさか雪国に落ちると思わなくって
お詫びに"親父のコート"あげるから、これでチャラにして
by神様>>
「あいつ、神様だったのか……」
というか、"親父のコート"って1の最強防具だった気が。
いいのか、神様。
しかし、寒いのも確かなので、有り難く着させて貰うことにした。
うん、暖かい。
そして、俺は目的の場所へ足を向けた。
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[mokuji]
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