01

毎日が同じ事の繰り返し。
些細な事は違うかもしれないが、大体は変わらない。
学校行って、勉強して。
家に帰って、風呂入って、寝る。

刺激が欲しかった。

そんな時に出会ったのが、ゲーム。
RPGは勿論、シューティングゲームや、アクションにも手を出した。
一番のお気に入りは、影心(の英語表記)と戦国婆沙羅。
やっていて、これ程のめり込める物はなかった。

「(今日はどっちやろうかな)」

そんな事を考えながら、帰宅路を歩っていた。
その時だった。

凄まじい衝突音と共に、浮き上がる体。

「(自転車が宙に浮いてる)」

そんな場違いな事を考えながら、背中に衝撃が走る。
痛みは何故かない。が、視界は真っ赤に染まった。
錆びた鉄のような臭いに、目眩がする。

「(いや、意識が遠くなっていってるんだ)」

そんな事を考えながら、視界は赤から黒に一変した。


暫く、時が経った。
どれくらい経ったか分からない。
自分が何者かさえ分からない。

 <<自分は……何だ?>>

言ったつもりが声になってない。
体を動かそうとするが動かない。
諦めて、全身の力を抜くと、人型をした光が、自分の前に現れた。

「いよーう。初めまして、元・人間」

 <<"人間"……?>>

どうやら、人間だったらしい。
人型をした光は、段々輝きが衰えて、やや茶色掛かった金髪の男に変わった。

「あちゃー……事故のショック強すぎたか?
 お前は人。――澪って言うんだ」

よく聞こえない部分があった。
自分は"〇〇 澪"と言う人物らしい。
その他経歴を述べてるが、正直どうでもよかった。

「あっ、テメ、聞いてねぇな
 実はお前、死んじゃいけなかったんだよ
 悪いな、こっちの手違いだ」

 <<"手違い"……?>>

手違いで死んだのか。
でも、不思議と憤りは感じなかった。

「あぁ。だから、別の世界で生を与えてやる」

 <<何処……?>>

「ん?それは後で言う
 それよりも、お前の肉体を精製しなけりゃなんねぇんだ」

カラカラと笑いながら目の前の男は言った。
そうか、肉体がないから喋れなかったのか。

「お前の肉体は、再生出来ない位酷くてなぁ。元の体には戻れないんだ
 だから、今から新しいのを作ってやる。希望があるなら言えよ
 それに応じたのを作るからな」

意外と親切らしい。
ふと、記憶と言うものがない筈の頭に、ある名前が浮かんだ。

 <<ウルムナフ・ボルテ・ヒューガ>>

すると、ある記憶が出てきた。
あぁ、好きだったゲームの主人公だ。
当時としては珍しかった、柄の悪い主人公。

「おぉ、マイナーだな
 いいぜ。ついでに能力とかもコピーしといてやる」

「フュージョンできるぞー」と笑いながら、男は言った。
閃光が走り、思わず目を閉じる。
光が止み、目を開けると、手が見えた。
立ち上がり、自分を見回す。
ウルだ。どっからどう見てもあの主人公だ。

「体質はお前の本来のものだからな。船酔いしないから安心しろ」

「あぁ、ありがとう」

声が、出た。
ゲームで聞いてる声と違うのは、体内で反響した声が耳に入るからだ。

「フュージョンだが、最初は下級のしか使えねぇから。SP貯めろ
 あと、喋り方キモい。成り切れよお前」

「貯め方知らないんだけど」

「あーうん、まぁまぁだな
 貯め方?敵ブッ倒せ
 お前の好きなもう一つの世界に連れてってやるから」

「そこで生きろ」真剣な声でそう言われた。
自分―俺は、静かに頷いた。
そこで、再び視界は闇に染まった。





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