09

魔王襲撃から、はや一月。
俺はとある別の村にいた。
その辺を散策しようかと思って、外に出ると、横から声を掛けられた。
その方向を見ると、銀髪の少女―いつきがいた。

「赤目の兄ちゃんどこ行くだか?」

「えーっと、散歩」

「おらも行くだ!」

何故だか好かれてしまったようだ。
それよりも、どうして俺がいつきの村にいるかと言うと、簡単な理由だ。

「赤目の兄ちゃんがいれば、おら達の勝ちだベ!」

「なぁ、ホントにすんの?」

「決まってるだ!
 おら達だって、ホントはしたくねぇべ
 んだども、やらなきゃ、おら達の生活が危ないだ」

歳不相応な真剣な目を見て、どれだけ苦労したかが分かった。
12歳に、こんな顔をさせる世の中が、憎らしかった。

「分かった
 俺も、出来る限りの事はする」

そう言うと、いつきの目が輝いた。
その顔を見て、天真爛漫の二つ名が相応しいと思った。

「いつきちゃーん!」

「勇太!どうかしただか?」

「狩りさ行った連中が、大勢のお侍の姿さ見たらしいだ」

情報が、どこかから漏れたのか。
いや、この時代には隠密がいたな。
きっと、その連中が盗聴でもして知らせたんだろう。
準備に急ぐいつき達の後ろ姿を見ながら、俺はそんな事を考えていた。
空からは、雪が降り始めていて、段々強くなっていた。


「一揆じゃ!一揆じゃー!」

「打ち壊しだべー!」

獣の雄叫びの様な男衆の叫び声の中に、いつきの高い声はよく通った。
ちなみに、俺達は今、山の頂上にいる。
今回、戦う相手は魔王の所ではないらしい。いつきがそう言っていた。
戦開始の、ほら貝の音が鳴り響いた。

「二期作!二毛作!」

「お侍めぇ、覚悟するだぁ!」

かなりの勢いで、村人は山を降りて行った。
青の軍団が、近道をしようと坂を登る。

「これでもくらうべ!」

いつきの掛け声と共に、雪の大玉が落とされる。
坂がそれなりの角度な為、勢いも半端ない。
青の軍勢は、進路を即座に変更した様だった。
凄く、デジャブ。

何故ここまではっきり状況が言えるかというと、今いる山がかなりの標高だからだ。
今、農村の方まで入られた。
無駄のない指揮だ。両者の被害を最低限に抑えてる。

「そろそろ準備した方がいいかもな」

「……分かっただ」

決意に満ちた眼差しで、いつきは言った。
やはり、歳に相応しくない。

「いつき」

「どしただか?赤目の兄ちゃん」

「俺が先に出る」

「!」

いつきは、驚いた顔をした。
反論が出る前に、俺は続ける。

「大御所ってのは、最後に出るもんだろ?
 お前は、怪我したやつに手当とかしてろよ。ヤバくなったら呼ぶから」

「だども!」

「魔王を返り討ちにした俺が、ただの侍に負けると思ってんの?」

と言うと、渋々引き下がった。
「危なくなったら、助けさ呼ぶだよ!」と言いながら、
いつき達は山を別のルートで降りて行った。
これでこの場は俺一人。この方が楽だ。
先鋒部隊と思わしき侍が、見えた。俺は、身構える。
だが、何故か居たのは二人だけだった。

「Hey,guy!
 こんな雪山にlonelyで何してんだ?」

「政宗様、ご油断召されるな」

六本の刀を持つ眼帯男に、オールバックの強面の男。
しかも眼帯男は、奇妙な日本語を話してる。
これは間違えようがない。伊達政宗と片倉小十郎だ。

「ねぇねぇ、眼帯のおにーさん
 こんな辺鄙な所に何しに来た訳?」

「テメェ!政宗様になんて口聞いてやがる!」

「Stop,小十郎
 アンタこそ、こんな寒空のしたで何やってんだ?」

キレた小十郎を、政宗が諌める。
そしてそのまま、俺に問い返した。

「アンタらを止める為だ、バーカ」

そう言って、俺は駆ける。
スティンガーになった鈎爪付きの手甲は、見事刀で防がれた。

「へへっ
 やるね、子供に泣かれそうな顔してるのに」

「ブフゥッ」

「ま、政宗様。笑わないで下さい
 テメェ、何言ってやがる!」

どうやら、俺の言葉がツボにはまったらしい政宗は、必死に笑いを堪えてた。
小十郎の方は、余計怒っていた。
切り返しをされそうになった所を、俺はバックステップで避ける。

「失せろ!」

そう叫んだ後に、雷を纏った鋭い突きが繰り出された。
雷は効果範囲が広いというのを覚えていたので、俺は走って避ける。
逃げた先を狙って、別の方向から雷が飛んで来た。

 ドォオンッ

凄まじい衝撃音がした。
俺の体が宙に浮いた。またもやデジャブ。

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