07

「アンタが魔王?ただのおっさんじゃん」

挑発するかのように、俺は言った。
我ながら馬鹿だと思う。
予想通り、魔王の殺気が更に凶悪なものになった気がする。

「余は人にあらず、余は第六天魔王―織田信長ぞ!」

「はっ、なら俺は"神殺し"だ!
 覚悟しろよ、おっさん!」

「手負いの獣が何を喚くか」

明らかに見下されている。
俺は、本日三度目のフュージョンをする事にした。

「(バルド!)」

見慣れた光に包まれた後、俺の体は変化していた。
天使にしては神々しい気がしないのは、ウルが元々闇属性だからだろうか。
そして、俺は心の中で言葉を言う。

「(グレイス……!)」

柔らかな光が、俺と村人を包む。
味方全体を回復する呪文だ。
だが、多用は出来ないと思う。一回使っただけでかなりの疲労感が来たからだ。
三度目のフュージョンという事もあるのかもしれない。

「ふん、小賢しいわ」

と言って、またライフルの様な長銃を構える。
確かあれは、"遠雷遥"。八連射まで出来る技だったはず。
ズガンッという音がすると同時に、撃たれたのは……
俺じゃなかった。

「うわぁぁああ!」

「喜作!喜作がやられただ!」

喜作!?
俺は、焦った。それと同時に、怒りが込み上げる。
そして、即座に喜作の元へ飛ぶ。

「澪……だか?」

俺の姿を見た途端、息絶え絶えながらも喜作は言う。
俺はそれに応えるかの様に、ドラグナーに変化をした。そして、"ライフデュー"をする。
青白い光が喜作の傷を癒した。だが、かなりの出血だった為か、喜作の顔色が悪い。

「ここから離れろ」

俺は、静かにそう言って、魔王を見据えた。
今度の銃の標準は、俺だ。

「余が直々に地獄の蓋を開いてやろうぞ」

「ふざけんな」

魔王に引けを取らない邪気が、俺から溢れ出てくるのが感じられた。
今なら、あれに成れる気がする。本当は、まだ成れる筈がないのだが。

「ふん、うつけめがぁ!」

ジャコンッという装填音が聞こえ、その後に立て続けに発砲音が五回起こった。
だが、その銃弾が俺に当たる事はなかった。
何故なら、俺が全て掴み取っていたからだ。

俺は、最高位の悪魔と謳われている魔物―アモンに変化をしていた。
本来ならば、成れない。
あの神様の言葉の通りならば、
Lv.3のフュージョンモンスターのレベルをMAXまで上げないと、変化出来ないからだ。
だが、俺の憤怒がその前提を覆した。
禍々しい風体に、村人が怯えながら逃げているのが何と無く感じられた。
いいさ、ここを守れるなら。

「魍魎如きが、余に逆らうか」

「俺は、アンタを許さねぇ!」

言うと同時に、翼を広げ魔王に鋭い爪を振りかぶる。
が、マントでそれを防がれた。
続いて、連続で蹴りを繰り出す。
ガードブレイクが起こったのを見逃さずに、強打を叩き込む。

「ぐぅっ!」

「許さない、許さない、許してたまるかぁぁぁぁああああ!!」

俺の中で、何かが暴走するのが分かった。
「あぁ、SP切れかな」と頭の隅でそんな事を考えながら、俺は目の前に力を集める。
そして、そのまま勢いよく上空に飛び上がり、力を放った。

「"これで終わりだ!"」

村人が全員逃げていてよかったと思う。
建物に損害は無いが、人という人が全て塵と化しているのが見えた。
衝撃が消えた後、下に降りると、正に息絶え絶えとした様子の魔王が目に入った。
だが、眼光の鋭さは変わっておらず、じっと俺の方を睨んでいた。

「上総ノ介様!ここは一旦引きましょう!」

「女ぁ、余の邪魔をするか……」

衝撃に巻き込まれなかったらしい濃姫が、魔王の元に駆けつけた。
やっぱりあの人は人間だ。
俺はフュージョンを解除した。

「行くんだったら行けよ」

「「!」」

俺の言葉に、二人は驚いた様子で見た。
俺は、追い払うかの様に手を振りながら、続ける。

「正し、二度と来んな
 今度来たら、容赦しないからな。覚悟しとけよ」

魔王は顔を顰めながらも、立ち上がり、村を出て行った。
濃姫も、それに続くように後を追っているのが目に入った。
生き残っていた織田の部下達も、退却していく。
それを全部見届けると、俺の意識は暗闇に落ちていった。

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