家族





うちのくろもと的場様の月詠ちゃんが結婚して子供も2人います。

兄→春霞
妹→雪華


突然始まって突然終わります_:(( _´ω`)):_
オチなんてなかったんや


......................................................




 なんで、なんで。

「居たぞ!!追え!!」

 なんで、追いかけられているんだ?
 遡ること、と言いたいところだけど僕らも何が起こってるかわかってない。僕は雪華と母さんに頼まれた薬草を取りに来ただけだ。
 肩を掠った矢のキズが熱くて、思考の邪魔をして上手く考えがまとまらない、指先の感覚がしびれている、コレはもしかして痺れ粉とか仕込んでいたのかもそれない。ああこんなんだったら今日も家にこもっていれば良かった。

「春兄ィ!また来た!!」
「ッ!雪華こっち!!」

 深くフードを被っている素性がわからない、たぶん人間らしい集団が僕らを追いかけてくる。
 子供ふたりに大人五人とは、それにたぶん仲間がほかにいる、僕を狙ってきた武器を持ってる人が誰もいない、きっとどこからか僕らを狙っているはず、なら捕まらないようにとにかく走って逃げなきゃ、木々の間を縫って走って飛んで、時々地面を蹴って足場を不安定にさせることも忘れずに。

「クソがァ!なんなのあの人たち!あたしら何もしてねーよ!?」
「口悪いよ、雪華っ!」
「っせぇ!春兄は怪我の心配してろ!地の利はこっちが勝ってんだ、とにかく走って逃げんぞ!」
「だね、っ!」

 でも正直限界だ、体がいうことを聞かない。手だけじゃなくて足の感覚も無くなっていく、これは確実に何かを盛られたなあ。血がまるで止まらない。

「春兄!!??」

 雪華の大声が遠く聞こえる、地面はもう目の前だ。痛みもあまり感じなくなってきた、走り回ったせいか薬の周りが速すぎる。
 ごめん雪華、こんな事だったらもう少しお兄ちゃんらしくしてやれば良かった。
 空気を切る音が近づいて来る、また矢が飛んでくる。

「春霞!!」

 痛みよりも、暖かい腕が僕を包む。大好きなマフィンの香りと大嫌いな血の匂いが次いできた。

「かあ、さん…?」
「ごめんね、怖い思いをさせたね、もう大丈夫だからね」

 気丈に笑ってまた僕の体を抱きしめる。その力は痛いくらいだ。

「母さん後ろ避けてェ!!」

 雪華が最近覚えばかりのみだれひっかきで2、3人飛ばす。さすが父さんの子だ遠慮も手加減もない。

「見つけた、月詠、だな。」
「っ!?なぜ、貴方達が…!」

 背中の矢を無理やり抜いて、母さんは相手を睨みつける。陽の光が苦手なのに、母さんはギリリとにらみ続ける。
 肌を指すような緊張感が森を占める、よく分かんないけど多分過去になにかあったな。さすが泥棒家業、怨み辛み妬みはフリー配布ってか?

「子供たちは関係ないでしょう!なぜこの子達を狙うのです!?」
「大切なものを狙うのがお前らだろう?なら俺達はそれに従うまでだ。」
「貴方達と私達は違うでしょう?なら正面から向かってらっしゃい、私は逃げも隠れも致しません」
「地下に住んでいて笑わせてくれる」
「あら?住める場所に住んでいるだけ、隠れるつもりなら現れるなんて素人のようなことは致しません」

 こんな母さん初めてだ。いつも笑って優しくて料理が上手で賢くて、時々鋭くて。
 こんな、殺気を放つような人ではない。

「これ以上子供たちに手を出すようであれば、私を殺してからにしなさい」
「っ!?」
「母さん!!?こんなん怖くないか」


「雪華」



 小さな声、でも、確かな圧力。
 そうだ、そうだった。我が両親はただの泥棒なんかじゃない、あのアーテルに席を置いている死線も戦線もくぐり抜けてきた人たちだった。

「…なら、貴様から行こう。そろそろ毒も周り切る頃だ。動けるわけがない。」

 母さんの背にあった矢はしびれ粉なんて優しいものじゃなくて本当に毒みたいた。母さんの顔色は真っ青。
 リーダーらしき男の合図で二人の人間がナイフ片手に向かってくる。
 僕が出来ること、それは妹ぐらい守ってらやなきゃ。グイッと最後の力で雪華を僕の近くに寄せる。母さんの力が強くなる、ああこんなんだったら。もっと親孝行しとくんだった。
 父さんにも、言いたい事沢山あるのに。
 ごめんね。

「待たせた」

 思っていた痛みも、圧死してしまいそうな空気も、頬を伝うぬるい感覚よりも、なによりも先に聞こえてきた通る声。

「父さんっ!!!」

 近づいてきた男達はその場に止まり、むしろじりじり後退していくようにもみえた。
 父さんはいつもの飄々とした雰囲気はまるでない、ギリッと相手を睨んでいる。

「春霞も雪華もよく頑張ったな」
「父さんっ!春兄と母さんが!」
「大丈夫、今助けてやっから、悪いけど雪華は春霞をあの岩の裏に連れてってくれ」
「母さんは?!怪我してんだぞ!」
「相変わらず口悪りぃなあ、誰に似たんだか…大丈夫、父さんに任せろ」
「…チッ!これ以上母さんのこと怪我させたら父さんのことジジイって言うからな!!」

 そう言って雪華は(不本意だが)僕を抱きかかえて岩の裏場へ。

「ごめんね、兄ちゃんなのに」
「関係ないよ、あたしが動けるから…それより父さんたち大丈夫かな」
「…僕らは見ていよう。下手に手なんかだしたらきっと邪魔になる」

 ガァァアン、大きな音。
 見たくても体が思うように動かない、慌てて雪華の方に視線を移すと、震えていた。

「雪華…?」
「怖い、怖い…っ!」
「雪華っ!」
「…春兄、私らが思ってたより父さんたちは、強くて怖いよ」

 支えられてチラリと見ると、そこは死屍累々。数人いた人間は立ち上がることすらできない。たぶんあの大きな音はなにかわざを出したのだろう、証拠に木々が倒れている。

「うちのカミさんとガキに手ェ出すたァ、いい度胸じゃねぇか」
「…まさかくろもまで釣れるとは」
「分かってやってたろ?ガキ捕まえりゃ親は出てくるからなァ…これだからニンゲンは」
「ならお前らの日々を振り返るべきだな」
「ハッ!親がクズなら子もクズってか?お生憎様ァ、うちの子達はくっそ優秀だからなぁたとえ自分らが危なくても、怪我した母親の心配を出来る奴らだ。」

 ゆらり、父さんの腕が動く。指は三つの大きな手。握ってもらうと安心する大きな手は今は、僕ら身内でも死を覚悟するような武器にみえた。

「だからテメーらはここで殺す」
「教育上宜しくないんじゃないか?」
「お前がいる時点で良い教育は諦めたよ、それにアイツらは大丈夫」
「なら、月詠からやろうか?」
「ど三下が、この俺が手ぶらで来るわけねーだろ、解毒剤もキズ薬ももう渡してある」

 ゆらり、まだどこかふらついているけど母さんが立ち上がる。二人の殺気は恐ろしいとかおぞましいとかじゃあない、泣いて媚びても死を覚悟する、子供でもわかる。いや、このふたりの子だからこそわかる。

「よくも、子供たちを傷つけましたね…!」
「子は宝、俺達の宝を傷つけたんだ、それ相応の覚悟はできてるよなァ!?」

 安心と恐怖が一体化している、なんとも言えないこの感じ。でも、もう「大丈夫」だって分かってしまう。

 これは僕達家族の話、めんどくさがり屋だけど家族想いの父さん、優しくて料理と本が好きな母さん、そんなふたりに育てられた僕らのとある1日。



 反抗期は、程々にしようっと。




END

back




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -