接触
気質は違えど
天才な二人
さつきとアヌビスの話
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オイラは「天才」が好きだ。そして不幸な奴も大好きだ。
だってアイツらは変化し続けている。天才は天才らしく前へ前へ進む努力をしているし、不幸な奴は不幸な奴なりに幸せになろうと努力している。そんな変化する奴らをこのオイラが気に入らないハズがない!
そんなこんなでオイラは身近な「天才不幸野郎」に干渉をしてみたいと思う。
コンコンコン、なんの飾り気もない質素な扉を3回ノックする。このノックはライトと同じだからきっと部屋の主は返事をくれるはずだ。
「ラ、ライト…?」
「ドーモ♪残念ナがら、さつきデス♪」
「ひっ、!!!」
バタバタと落ち着かない音が聞こえてくる。おーおー、ビビってる。まあ研究畑のオイラといい勝負ってところかな。
ま!勝手に入るけど、お頭からは許可貰ったしカギも作ったしね。
カギを入れて2、3回動かせば簡単に扉は開いた。
「きったねー部屋。オイラとイイ勝負だヨ天才くん」
「なななななななんで、部屋に、はいって…」
「許可はイタダキマシタから♪」
「なんてこった!」
部屋のどこかに隠れやがった天才に向けて話すけど、誰かと話すときはちゃーんと眼を見ろって教わらなかったのかねぇ
「お、俺と関わったって、何も良いことなんかないですよぅ…」
情けない声が聞こえる。
今ので場所がわかった、うちの天才はどうやらテンパると使い物にならないようだネ。
「イイヤ、いい事がアルカラ近寄ったんダ」
でもオイラは優しいから、近くの椅子に座っているであろう方向に向かって喋ってやるよ。
「天才ハッカーアヌビス、身長は179cm体重は60kgと痩せ型体型。極度ノビビリデ人間から抜カレタ右目は驚くと血を出す。」
「…!」
「どういった経緯でココに来タノカハ知らないし、知る気モナイ。過去ナンテ調べればボロボロ出てクルし」
「じゃあ…何の用で、俺に関わるんです」
「天才、ダカラサ。そして不幸野郎ダカラさ。オイラはそういう境遇ガだぁーい好きナノサ。お前は変化し続けているカラネェ」
もぞもぞとやっとコチラを見る。
右目を見ると血を拭いたあとが見受けられる。あーあ、驚かしちゃったんだね。
「お前サンは、数々のセキュリティをハッキングして、数多のコンピュータを台無しにしてきた天才サマだ。だから、オイラは仲良くなりたいんだ」
「…俺は、」
「モチロンすぐとハ言わないヨ、気持チノ整理とやらモあるだろうシネ」
カタンと椅子から降りて、まだ血のあとが残る頬に手を伸ばす、すると驚いたというよりも反射的に目をつむり、手を構える。
怖がんなくていいのにね、でもほら、トラウマとかってのは簡単にはなくならないからね。心ってのはそれほど奇奇怪怪なんだよ。
「オイラはねぇ、友達ッテノガ極端に少ないんだ。最初はソレデいいと思ッテタシ、困ることはなかった。優秀な助手も最近見つけたシネぇ…」
「…?何が言いたいんです?」
「ハッキリ言えば、友達にナラナイかぃ?ええっと確か…ビスコくん」
「そのあだ名も調べたの…?」
「キシシッ、オイラが作ったとある機械でこのアジトの管理をしてるんだ、生みの親が子供のデータを見れるのは当然じゃないか」
そう言ったら、彼は少し視線を下げて最初から合わせない目を、本格的に合わせないようにしてきやがった。
「き、君の機械は俺が全部みたよ…」
「ハ?」
ヒッとまたビビったら、少しだけ血を出した。ごめんね、でもオイラ的には驚かす気はサラサラないんだけど。
「ききき君は、天才科学者って、聞いたから、おもしろ半分で、し、調べたんだ…」
ふぅん、思っていたより彼は面白い。
「ソウカ…天才の前には、この最高のマッドサイエンティストも形無しってコトカィ…」
「えっ!?いや、ちがくて!!」
ワタワタと慌てて弁解する。いやいや、ちがくないよと言いたかったがあまりにも必死だったから黙っていよう。
「俺は、その…知る事が、その、好きだから調べただけであって!そのー君の作り出したものそれぞれ難しくてっ!その、途中で辞めたくなるほど難しくて、だからその」
「そのその、言い過ぎダヨ」
ぺしん、軽くデコピンをする。
あーあ、思っていた展開とはだいぶ違かったな、本来なら脅してでも彼が今までハッキングしてきたデータを横取り、いいや、見せてもらう予定だったのに。こんなんじゃ、仕切り直しじゃないか。
「ワカッタよ、じゃあマタイツカ会おうジャナイか、今度はそうダナァ、手土産デモ持ってクルカラさ、ソノ時ゆっっっくり話そうか」
「ひぃぃ!すす、少しじゃ」
「ダメダヨ♪」
「ひいいいい!」
また血を流してどこかに隠れた。
いやだから、驚かす気はなかったんだ、でも思っていた以上に面白くてメンドクサイ奴だったから気に入っただけだよ。
「じゃーね♪また」
バタン、扉を閉めるときは音を立てて。それがオイラのやり方さ
「面白いもの、みぃーつけた」
ニィっと笑って、ポケットの中の飴玉を取り出して咀嚼する。ガリガリ音を立ててソーダ味の飴はすぐ無くなった。
-End-
おまけ
コンコンコンッ
「はいはーいライト君ですよーご飯ですー」
「ライト!?はははは入ってぇぇぇ!」
「は?何なに、何慌ててるの!」
ガチャッ
「うわぁ…部屋きったねぇ」
「ううっ…」
「わっ!何泣いてるんだよ!血!血出てる!ほらほら拭けよ、何があったんだよ」
「さつきが、来た、もぉぉぉ会話するの怖いい」
「(あいつが俺に近寄ったのはそう言うことかよ…タチ悪ぃな)」
「ライトでよかった…うううっ」
「はいはい!泣かない泣かない!さつきには俺からキツーく言っとくから!」
メンタルケアはライト君のおしごと
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