dress





ドレスを着るのが好きなあかと
ドレスを作るのが好きなキュプラ
そんな二人の話



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ジリリン!ジリリン!
大きな音が店内に響く、あちらこちら布で埋まっている店内に似合うアンティークな固定電話。そこにバタバタと足音を立てながらここの店主は受話器を取った。

「はいはいどうも!フィネルス・コッティ店長キュプラです!」

今度は元気な声が店内に広がった。

『ほほほっ相変わらず、元気な店長はんどすなぁ』
「おや、その声はあかとさんじゃないかい。お久しぶりですね」

相手はフェリークの集い会長のあかとだった。知り合ったその日からずっと注文してくれるお得意さま中のお得意さまだ。実質、彼女のドレスの六割を作ったと言っても過言ではない。

『そう言えばそうどすなぁ…キューちゃんもお変わり無いようで安心しましたわ』
「ははっ!元気だけが取り柄ですから」
『そいつは上々どす、元気がなきゃなにも出来ひんどすぇ』
「確かにねぇ…それで?今回の要件はなんですかな?」
『せっかちどすなぁ…もう少しお話してたいのに』
「これでも仕事中の身でしてね、今度のお茶会に参加できればお話しましょ」
『ふふっ、ほんなら本題どす。今度旦那のフェンネルはんとデートする事になんやけど、今までのドレスやのぉて、青色のそれもエメラルドブルーのドレスを作って欲しいん…モチーフは薔薇で、キラキラは控えめにして欲しい、ああでもリボンよりは大きめのレースをメインに作って欲しいわ』

ババッと言われたリクエストをそこらへんのメモ用紙に書き留める。お客様のリクエストに忠実に答え、予想以上の物を作り上げることが職人。そして、そうすることがキュプラの職人としてのプライドであった。

「はいはい、やっぱりあかとさんの注文は作りがいがありますね」
『ホンマ注文の多い客で堪忍ね』
「最高の品をお約束しますよ」

そう言うと向こうも『ほほっ』とまたいつも通り笑った。

『ほんなら、期待しとるさかい。』

ガチャン、電話のキレる音がしてツーッツーッと聞こえた。
キュプラも受話器をおろし、先ほどのメモを見る。
なんともまた難しい注文だと、そして作りがいがあると思った。さすが常連客でお得意さまは容赦がない。それはキュプラの腕を信用しているからなのか、はたまた面白半分でやっているのか。いずれにせよ、キュプラのやる気を駆り立てるのには十分だ。

「ふふっ…最っ高のドレスを作ってやろうじゃない!」

言うやいなや、衣装の元となる布が大量にしまってある部屋へ向かい青の布を片っ端から見る。バラをご所望なら淡い青では駄目だ、自身を主張するほどの大きな存在感を放つ青色、瑠璃色よりは濃い方がいいだろう、しかし紺青色よりは淡い方がいいだろう。ふと、指に触れたのは瑠璃紺と言われる色で、ちょうどイメージ通りの色だ。

「じゃあこれで作りましょ!」

色が決まれば後はイメージを描いて、縫って作って完成させる。

そうだなぁ、青ベースで作るのであれば、白のストーンなんか良さそうだ、ああでも大人っぽく黒いリボンを作るのも悪くない。いっそポイントとして柄物を入れるのもいいかもしれない。

考えていたらワクワクして今日の仕事が手につかないそんなことすら思ってしまう。本当にやる気を作るのが上手い人だとここに以内依頼人を思った。


カランカラーン


1人、そんなことを思っても今日の仕事は始まる。

「ごきげんよう、店長さんはいらっしゃいます?」

また今日も素敵なお客がやってきた。
キュプラは、満面の笑みで客を迎える。それは、仕事に誇りとプライドと自信を持って笑うのだ。



「はいはいどうも御客様!今日は何をお求めで?ささ、どうぞじっくりご覧あれ!」








-End-

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