ミルクティーとサンドイッチ
くくると砂月の馴れ初め
はじめましてはうまくいかないものですね
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初めてあった時、彼はひどくボロボロだった。外傷はもちろんだが、精神的な面でもボロボロに傷ついていた。
食事はほとんど取らないし、顔を出したかと思えばすぐに消え、いつ寝ていつ起きてるのかすらわからない。同じ場所にいるというのに。
「あかと様…彼についてなんですが」
二週間経っても未だ彼と会話ができない私はついに我らがボスに問いかける。
せっかく仲間になりそうなのに、放っておくなんてできない。
「…まあ引っ張って連れてきたようなモンやからな、まだ整理がついてないんやろ。」
「そう、なんですかね…」
「ここにきて二週間、まぁだ逃げ出してへんし、ゆっくり待ってみるのもええんとちゃう?」
「もう二週間です、彼が倒れないか心配で…」
するとあかと様はキョトン、と目を開いた後目を細めて小さく笑った。
「くくるが人の心配するよぉになったなんてなぁ、フェンネルはんも喜びますぇ」
今度はこちらが目を見開く番だった、たしかに言われてみれば、と少しだけ顔が赤くなる。
「からかわないでください…」
「からかってへんって、照れてるくくるも可愛ええなあ。」
失礼します、ほぼ逃げるようにあかと様の部屋から出る。さてどうしよう。
―――彼、ご飯食べてたかしら?
ふと思いついた当たり前のこと。
出会ってから1度も一緒に食卓についてないのだ。
オヤツにサンドイッチでも持っていこうと台所へ向かいと、彼がいた。
「砂月ちゃん…!」
久しぶりに見た彼はなんだか痩せているように見えた。もともと細いから余計心配してしまう。
「ソの呼び方止メテって」
「そんな事よりどうしたの?めずらしいわね」
「別ニ…なんだって」
きゅるるる…
小さな音が聞こえた。
そろりと彼の顔を覗くと、これもまためずらしいことに赤くなりお腹を抑えていた。
「ふふっ」
「…不可抗力、生理的現象」
「もぅっ!難しいこと言わないで、オヤツにしましょ何食べたい?」
「…勝手にスレバ」
「素直じゃないわね〜」
ふてくされたようにテーブル席につくあたりお腹はちゃんと空いているようだ。食欲すらなかったらどうしようと思っていた。
食べる事は生きること、その食をやめてしまったら死ぬことへ向かうことと同義だと私は思う。
「ん〜蜂蜜もナッツもあるし、ハニークリームサンドにしましょう」
「ナァニそれ?」
「ほんのり甘い幸せサンドよ♪」
そうと決まればまずはクリームチーズを耐熱容器に入れて少し温めたらいつもよりちょっと多めにはちみつを入れてよく混ぜる、もう少しはちみつ入れちゃえ。
それができたら今度はナッツ類をフライパンでかるーく炒ったらさっきのはちみつクリームチーズに入れて和える、ポイントはミックスするといよりは、ナッツにクリームをつける程度の感覚でOK!
そしたら予め切ってあるパンに挟んで、両面を軽く狐色になるまで焼いたら完成。
「くくる姉さん特性サンドイッチ♪愛情たっぷりだから残したら許さないんだからっ!」
お腹に優しいミルクティーも一緒に目の前に置くと、恐る恐る、そろりそろり、手に取り、小さく口に運ぶ。
「オイシイ…!」
ゆっくり表情を変えてまた静かに食べ続ける、三つ置いたサンドイッチはすぐに無くなりぬるいミルクティーも飲み干した。
「おいしい、美味しかった」
噛み締めるように、伝えるというよりは零してしまった言葉、そして落ちてしまった涙。
ずいぶん苦しそうに泣くな、それが第一でその次に生まれた感情は一体なんなんだろうか。名前をつけるにはまだ恐ろしい。
「また作ってあげるわ」
この気持ちは大切に扱おう、そう思って私はまず彼と友達になることを決めた。
その次へ進む時は、覚悟を決めて。
これが私と、砂月のスタートした話。
end
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