「ンん…甘いモノ食べタイなぁ…」
「あーわかる、ホットケーキとかフレンチトーストとか」
「俺はプリンとかゼリーとか…ああでもケーキでもいいなあ…」

 包丁すら扱えない男が三人、台所でうんうん唸っていたら大きな宝石を目に宿した少女が音もなく現れた。

「簡単なものでよければ作りましょうか?」
「月詠!!?」

 突然の声に3人とも大きく驚いた、アーテルの良心とも呼ぶべき月詠が微笑みながらそこにいた。

「まだまだ火は怖いですが…少しの時間なら出来ますので!ちょっと待っててもらってもいいなら…」
「わーー!まじで!?月詠の手作り!?何でも嬉しい!」
「く、くろも君声が大きいよ…」
「あーア、こレがリア充爆発シろッテ感覚なノかな」
「俺たちゃ独り身らしくおとなしく待ってよーぜ」
 周りに幸せオーラを撒き散らし出したふたりをよそに、ライトと砂月がテーブルにつく。すると大きな影が現れた。

「なんでみんなここに集合してんの?」
「ヴェネヌ」

 倉庫の整理をしていたようで、ところどころ埃がついている。さすが力持ち、仕事は早いがどっか抜けてるのも愛らしさをだすのか。

「偶然だヨ、甘いの食ベタくてサ〜」
「そーそー、そしたらリア充見せつけられて胸いっぱいって感じ?」
「いや聞かれても分かんねぇよ。あ、珈琲飲むか?俺今から飲むけど」
「よろしくヴェネヌ母さん」
「だれがお母さんだっつーの」

 テキパキとそれぞれのマグカップをとりだして、自分とライトはブラック、砂月にはシュガーとミルクをたっぷり入れて、ポットのお湯を入れたら完成だ。

「エーちゃんのも、入れて〜」

 大きくあくびをしながら現れたのは、アーテル1の不思議ちゃん、エルだ。首には先日とったばかりの彗星モチーフのチョーカーが輝いている。

「エルはココア?」
「おおっ、さすがヴェネヌ、そーだよエーちゃんは甘い甘いこっこあ〜!」

 こんなフワフワした人間が体術じゃ負け無しなんて不思議なこともあるもんだと砂月は角砂糖を食べる。後ろからチョップされたが気にしない。糖分を取ってないと死ぬ。
 笑い声が聞こえてきた、楽しそうに笑う声といたずらを思いついたような声。

「Fantastick!!素晴らしいデス!」
「だろ〜!」

 聞きなれない言葉を流暢に扱うメアリと派手な格好をしたカタルが部屋から出てきた。

「ちょっとぉ!!!女の子なんだからもう少し肌仕舞いなさいよ!!あとしゃべり方!」
「るっせーな!!別に俺がどんな喋り方してようがいいだろーが!!」
「こればかりはワタシはくくる姉さんの味方デス、カタルは喋り方を直すべきデスッ!」

 話し合いが終わったのか、くくるが器用に髪の毛を動かしながらカタルに掴みかかる。女性らしいくくると、ボーイッシュよりは男らしいカタルはいつもこんな感じだ。





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