#2










アームに内蔵されている通信機を介してミッション成功の報告をハンターベースに入れた。今日は開発が半ばのメカニロイドが過失致死を起こす事故があり、その元凶の破壊とジャンクの回収作業があった。間違いなくイレギュラー化してしまっていたメカニロイドは云うまでもなくウィルスに侵されていて、開発途中故のセキュリティの甘さに問題があっただろうと推測できる。それも大量生産型で数が多くなかなかに厄介だった。感情を持たない相手に銃を向けるのはある意味気楽だが、無論気分は晴れない。敵の数だけE・カートリッジを吸収してすっかり回復してしまった特殊武器に何とも複雑な感情を覚えた。通信機の向こうで聞こえた俺に対する感嘆の声も本当はあまり嬉しくなかった。






「で…こんなにも負傷したのはその考えごとをしていたからなの?」

『す、すみません…ハハ…』



「私の貴重なフリータイムが!」帰ってきたハンターを診るのが名前1さんのお仕事。戦闘で割れてしまった俺の装甲を見ると彼女は高い声をあげた。仕事を増やさないでほしいと言葉を切なそうに声に出して、破損した部品に手をかけていた。欠落した青い塗装が剥がれている。…倒したくないという本心がイレギュラーに一瞬の可能性を求めてしまって、避けれた攻撃も当たってしまっていた。隙を見せればやられる現場で自分は何をやっていたのだ。善でありたいと願う気持ちが銃口を絞る行為を躊躇わせて、判断を鈍らせてしまっていたと思う。俺は、何百何千のジャンクの上に存在しているのに良心を意識してる自分が皮肉に思えた。先輩達から"甘い"と言われたことが分かったような気がする。



『甘い、のか…?』

「エックス?」

『…、っえ、はい!?』

「……修復作業終わったわよ…。………大丈夫?」

『…大丈夫です』


「どこか不調でもあるのかなぁ…外装は直したし、内部の過熱も特に見られないし」

『いや…』



俺の反応に不満そうに彼女は無言で、動力炉が入っている辺りを手で叩いた。……見透かれている。「今度、お話聞かせて」俺の心理を窺うように、困ったように笑う名前1さんはやはり優しい人だと思った。

2010628