「ヤバッ!もう10時になっちゃう!」


世界は暗闇に染まり、赤みがかった満月が地上を照らす

そんな中1人の少女は慌てて自宅への道のりを辿っていた



「もう真っ暗じゃん……こんなに暗いならもっと早く帰れば良かった」



そう呟く彼女の名は夏希
友人宅から自宅へ帰っている途中なのだ



スタスタと早歩きする夏希の歩いている道には電灯というものがあまり無く、頼りになるのは月の光だけである

そんな道を歩いていた夏希の視線の先に1つの影


心の片隅に恐怖がよぎったが家に帰るためだと、仕方なくその影の方向に向かった


夏希は止まって動かない影を不思議に思ったが素早く横を通り過ぎようとした


瞬間、微動だにしなかった影がこちらを向き、襲いかかってきた

一瞬夏希は何が起こったか分からなかったが、首筋に鋭い痛みを感じ悟った


………首……痛い、なにかで刺されたの………?

叫ぼうにも彼女の口からは苦痛を逃れるための吐息しかもれない

ハッハッと荒い呼吸をする彼女の首筋に怪我を負わせたのは、美しい青年だった

肌は白く瞳だけが爛々と輝いている

不覚にも夏希は見惚れてしまった


そんな夏希の耳にジュク、ズルルという血が吸われる音が聞こえてきた


そこで夏希はようやく納得した

――吸血鬼に襲われてる
でも本当に吸血鬼がいるなんて思ってもみなかった……


どんどん身体から血が抜けていく感覚は何とも言えない
首筋の傷跡がジンジンと疼いたが頭がボーッとしてきて考えられない


彼女の最後の言葉はか細く小さかったが彼女を襲った吸血鬼には聞こえた



「……まだ…死にたくない」



でも…仕方無い…よね………

そう呟き夏希は意識を失った



そんな彼女の首筋に未だに噛み付いたままの美しい青年は今までの考えをやめ呟く



「ふむ、死にたくないと言うならば、我が同胞にしてやろう」


本当は久方ぶりの食事、最後まで喰らいたかったがな


本当に残念そうに呟く青年は目の前の餌を地面に捨て、そのまま去って行った

そこには地面に横たわる夏希がいるだけだった

ただ1つ変わったのは、夏希が人間から吸血鬼へと変貌した事だけだった


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