うららかな目
どうしてだかは知らない。知らないけれどここ数日家に帰って一人で居ると、どうにもこうにも涙が止まらなくなる。賑やかでくだらないバラエティ番組をテレビで流しながら一人、はらはらと頬を濡らし続けている。
(どうしちゃったのかな、私)
特別に悲しいわけでもない、仕事が上手くいっていないわけでもない。恋人は居ないがそれに不満を抱いているわけでもない。同僚とのランチは毎日楽しいし、週末に友人と飲むお酒は美味しい。好きなアーティストのライブが今月末に控えているし、先週買ったワンピースはすごく可愛くてお気に入り。それなのに。
「止まらんね、今日も」
ぽろぽろと涙が零れ続ける。もうコップ一杯分はいっただろうか、いやさすがにそこまでは泣いていない。だが時間の問題という感じもする。私は一体、何が悲しくてこんなにも涙を流しているのだ。
あまりにも涙が止まらないので、私はなんだか可笑しくなって雑多な引き出しの中から何が入っていたのかも分からない小さな空き瓶を取り出した。それを頬に当てて涙を採取する。
「人魚の涙。なんちてー」
部屋には最初から私一人しか居ないのにそのつまらない冗談でその場が更に静まり返った気がした。
私はきっと、少し頭がおかしいのだ。自分の涙を溜めるなんて。
[ 1/28 ][*prev] [next#]
[しおりを挟む]novel/picture/photo
top