皆様こんにちは
わたくし、ブンちゃんと申します
本当のお名前は浅川文子(アサカワフミコ)なのですが、お友だちは皆、親しみを込めて私のことを「ブンちゃん」と呼んでくれるのです
年の頃は純情乙女
お散歩と猫さんをこよなく愛する、ごく普通の人間でございます
今日はそんな私のとある一日の一部分をご紹介させていただこうと思います
お時間があれば少しの間お付き合いくださいませ


ブンちゃんの朝は早い。まだ陽が昇ってから一時間と経っていないのに、テーブルの上にはすでにほうほうと湯気を立てたモーニングコーヒーが置いてある。
「早寝早起きは淑女のたしなみです」
鼻からコーヒーの香りを吸い込み、恍惚の表情を浮かべるブンちゃん。
ブンちゃんのコーヒーはスプーン二杯のお砂糖だけ。ミルクはひとつ前の誕生日で卒業したのだ。少しずつ大人になる自分に、ブンちゃんは満足そうだった。
隣の家と家の隙間から漏れる朝日が大きな窓からちらちらとブンちゃんに降り注ぐ。
「お天気のようですね」
コーヒーカップをソーサーにかちゃりと置いて嬉しそうにブンちゃんが言った。
「今日もお散歩にゆきましょう」
ブンちゃんの日課はお散歩。毎日欠かさずお散歩に行く。
ブンちゃんは椅子から立ち上がって寝室へ入った。ベッドの枕元に置いてあるバスケットには赤いチェックのタオルケットが敷かれ、その上でグレーの縞模様の猫が眠たそうに欠伸をした。
「アメさん、おはよう」
縞猫のアメさんに朝の挨拶をしてから、ブンちゃんはクローゼットを開けた。クローゼットにずらりと掛けられたワンピースを前に、ブンちゃんは難しい顔をして腕を組む。
「むむ、今日は何を着ましょうか」
しばらくそうしてワンピースの列を眺めたあと、ブンちゃんは閃いたようにひとつのワンピースを取り上げた。
「今日はきっとお天気だから、これにしましょう」
白い襟の付いた空色のワンピース。続けて靴下と靴を選んで、ブンちゃんは満足そうににっこりした。
「空とおそろいです」
ベッドの上に洋服たちを並べてから寝室を出ると、アメさんがひらりとベッドを降りてブンちゃんについてきた。
「ああアメさん、私は今日もお散歩にゆきますが、アメさんはどうしますか?」
足元のアメさんにブンちゃんが問いかける。アメさんはブンちゃんを見上げて眠そうに「なぁあ〜」と鳴いた。
「わかりました。では一緒に出掛けましょうね」


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