言葉の続きを失った私を見かねてか、天ヶ崎くんが代わりに口を開いた。


「あの日、食事した帰りにおれが不機嫌だったから気にしちゃったんでしょ?」

そうか、メールを読んでくれたんだっけ。元はと言えばそれが原因で私は彼に嫌われたのではないかと不安だったのだ。あの日私が無神経なことを言ったから。彼の告白を断ったのと同じ時期に交際していた恋人の話、など。

私は頷いて、「変なことを言ってごめんなさい」と素直に頭を下げた。彼がそれを慌てて制止する。


「違う違う。皆川さんは何も悪くないんだよ、あれはおれの個人的な事情」

「個人的な?」

台詞を繰り返して見上げると彼は口を開けたまま数秒考えるような時間を空けた後、力強く頷いた。


「皆川さんに恋人の話を持ち出されたとき──ああもちろん昔のことだっていうのは分かってるよ、分かってるはずなんだけどすごく……嫉妬したんだ。うん、嫉妬だなあれは」

軽く握った手を口に当てて、視線をきょろきょろと浮かせながら彼は話した。


「で、自覚した。おれは、また皆川さんを好きになったんじゃないかって。──でも再会した時には本当に下心なんてなかったんだよ、ただ懐かしくて、話がしたいなあって」

信じられないだろうけど。と恥ずかしそうに話す天ヶ崎くんの顔はなんだか幼く見えて、高校時代の彼を思い出した。

あの時も彼は恥ずかしそうにしていたけれど、それでも言いよどむことなく気持ちを伝えてくれた。ずっと気になっていた、と。


『皆川さんのことがずっと気になってたんだ。だからあの、迷惑でなければ──』

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