五分後、十分後、一時間後。時間をずらして何度か電話を掛けてみたが結果は同じだった。メールも二通ほど送ったが返事も来ない。いくらなんでもおかしくないだろうか。私のことが気に入らないとしても、それを伝えることもせずにこんなにも突然連絡を絶つなんて、天ヶ崎くんがするとは思えない。


(……いや、それは分からない)

そうだ。そんなこと分からない。天ヶ崎くんがするはずない、なんて。そんなことを言えるほど私は彼のことを理解しているわけではないのだ。再会したのはついこの間。それから今まで、数えるほどしか会っていないではないか。いくら高校生の時に知り合いだったといっても、あれからどれほどの年月が経ったと思っているのだ。数年もあれば人は変わる。外見だけではなく中身さえも。時には、かつての姿など見る影もないほどに変化することだってあるだろう。だからこそ時は尊く、優しく、残酷なのだ。


────でも。

たとえそうだとしても、天ヶ崎くんが変わり、私の知っている彼ではなくなって、連絡を無理やり断とうとしているのだとしても。このまま終われるほど私は物わかりの良い女ではない。はいそうですかと、素直に引き下がるような楚々とした淑やかさは持ち合わせていない。メールも電話も無視? いーい度胸してんじゃないの。あんたがかつて恋をした女がどんな人間か、分からせてやるわい!


「天ヶ崎め……、絶対捕まえてやる」

もしかしたらこの時の私の目は、人生で一番まっすぐだったかもしれない。負の方向へ。

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