天ヶ崎くんともう一度会って話がしたい。私の素直な気持ちはそれだった。これが恋心なのかは分からない。昔といえど彼からの告白を断っているのだからそんなの虫が良すぎる。だけれど会いたいのは、繋がりを断ちたくないのは、心からの確かな気持ちだ。


私はまず電話を掛けてみた。図々しかろうがおこがましかろうがどうでもいいと思えた。行動を起こさなければ何も始まらない。うじうじ一人で悩んで涙を小瓶に溜めたところで、誰かがそれを見ているわけじゃない。非難することも呆れることもしてくれないのだ。ましてや「不思議なことするね」と言って、微笑んでくれることなど。

頭の中を回る思考をやっとの思いで断ち切って通話ボタンを押したのに、私の耳に聞こえたのは血の通わない自動音声だった。

『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません……』


(はあ?)

私はこの展開にかなり腹を立てた。感情の高ぶりによるものではないにせよこちらは泣きながら悩んだ末に電話しているのだ。緊張で指を冷たくしながら携帯電話を握っているのだ。それなのに何故、おかけになった電話番号はかからないのだ?


「ふざけんじゃないわよ、女からの電話はワンコールで出なさいよ」

相当に理不尽なことを呟いているのは分かっていたがこちらとて色々と気持ちの整理ができていないのだ。とにかく話ができれば、天ヶ崎くんに会えれば、何かしらの答えが出るのではないかと思って。

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