デスクの上に置いた携帯電話を見つめては、少し深めに息を吐く。あれから二日経った。彼からの返信は一向に来る気配がない。もしかしてメールを見落としているのだろうか、それともやはり私と付き合いを持つのはもう気が進まないということだろうか。それか、万が一ということもある、彼の身に何かあったのかもしれない。心配から電話を掛けようかとも思ったが、それはさすがに躊躇われる。恋人でも、想い人でもないのにたった二日連絡が取れないだけで電話? おこがまし過ぎやしないかしら。

だけれどこの二日、私の気が休まらないのは事実だった。同じことをぐるぐる考えては携帯電話を見て、息を吐く。例の涙の発作も、私の暗い気持ちに呼応するかのように酷くなっていた。おかげで私は少しだけ、外出すること自体に恐怖を抱くようになっていた。

ああ、何もかもままならないなあ。心はふわふわゆらゆらで、安定しなくて、涙はぽろぽろと流れ、まるで幼い子供のようだ。私は一人で立つということさえできないのか。私はただ、私はただ──。

ぽろ、と涙が零れ、私は慌てて席を立ち化粧室へ急ぐ。個室へ入り、ポケットから小瓶を取り出した。瓶の中の涙はいつの間にか九分目程にまで溜まっていた。もうすぐ、溢れてしまう。わたしのなみだ。

小瓶を頬に押し当てて流れ落ちる涙を受け止めながら、私は目を閉じた。心を落ち着けて、胸の奥から微かに聞こえる声に耳を澄ます。

私はどうしたい? 何が欲しくて、何が不安なのだろう。この涙はなぜ途切れないのだろう。自分のことなのだから、やっぱり自分で考えたい。分からないはずなんてない。この涙は確かに、この気持ちは確かに、自分のものなのだから。

聞こえるはずよ、見えるはずよ。耳を澄まして、目を凝らして。


──このままで居たくない。

[ 15/28 ]

[*prev] [next#]
[しおりを挟む]


novel/picture/photo
top



第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -