自宅の最寄り駅まで送ってくれた天ヶ崎くんに別れを告げ(家まで送ると言ってくれたが丁寧に断った)、とぼとぼと帰宅した。結局あの会話のあとにほとんど話すことができなかった。天ヶ崎くんは何かを考えて込んでいるように黙ったままだった。

シャワーを浴びてゆっくりと湯船に浸かり、体をすっかり温めても、その日はなかなか寝付けなかった。

馬鹿なことを言った自分、答えない天ヶ崎くん。どうやら彼の沈黙は私にとってはとても重たいものだったようだ。ずっとあの後姿が瞼の裏に張り付いて離れない。彼を嫌な気分にさせてしまっただろうか、彼に嫌われてしまっただろうか。もう私と、会ってくれないだろうか。ごめんね、恥ずかしい。もういやだ消えてしまいたい。口から出た言葉は二度と戻らない。わかってはいても、あの瞬間に戻って出そうになった言葉をがぶりと飲み込んで無かったことにしてしまいたかった。だってあのときまで私達の間には温かで楽しい空気が漂っていた。私がそれを台無しにしたのだ。

私はゆっくり目を開けた。それから布団から腕を出して携帯電話に手を伸ばす。真っ暗な部屋の中にそのディスプレイだけが現実味のない光で私の顔を照らした。ポチポチとキーを打って、私は天ヶ崎くんへのメールを打った。食事に付き合ってくれたことのお礼、それから変なことを言って嫌な気持ちにさせてしまったことをまず謝り、最後に、可能ならばこれからも友人として親しくしたいという旨の言葉を書いた。

出来上がったメールを保存して携帯電話を閉じる。こんな時間にメールを送ったら寝ている彼を起こしてしまう可能性もある。自分の気持ちを言葉にして少し落ち着いた私は、布団を被りなおして眠りに就いた。そして次の日の午前中、もう一度自分の書いた文章を読み直してから、天ヶ崎くん宛てのメールを送信した。

けれど、彼からの返信が来ることはなかった。





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