その日はとても懐かしい夢を見た。天ヶ崎くんに告白された当時に付き合っていた恋人の夢だ。天ヶ崎くんと昔の話をたくさんしたから、きっと記憶が刺激されたのだろう。単純な人間だ。

その恋人はとても、なんというか、変わったひとだった。私が通っていた高校のある駅から二駅先の私立高校に通っていて、ひとつ年下だった。知り合ったきっかけといえば朝の通学電車が同じだったという、まあベタな少女漫画によくあるやつなのだけれど、その辺りの話は割愛する。夢の内容はそこではない。

天ヶ崎くんに告白されたということを、私が馬鹿正直に彼に報告したときの夢だった。彼は特別な反応を見せるわけでもなく、冷静だった。その反応が私には少し意外だったのでよく覚えている。彼の普段の性格から言えば、怒ったり不機嫌になったりするのではないかと予想していたから。彼は私が告白されたことを気にするでもなく、天ヶ崎くんがどのような人物なのかということを知りたがった。不思議なひとだ。

穏やかで、とても良いひとよと私が言うと、彼は「ふうん」と相槌を打ったあと、「そんなやつに好いてもらえてよかったな」と言って私の頭をわしゃわしゃと撫でた。そして、「お前もそいつのこと、好きなんだな」と言ったのだ。彼の本意が見えなくて、私は少なからず動揺した。


「言っていることがよくわからない。私が好きなのは貴方だけですが」

彼はけらけらと笑う。


「うん。そうじゃなくて、友達として、そいつのこと好きだったんだなって。だってお前淋しそうだからさ。安心できる関係がひとつ無くなって悲しいって顔してる」

「ああ、そういうこと……。うん、そうね」

私は素直に肯定した。なんだそういう意味ですか。


「お前の目はまっすぐだ。何も捉われずに、汚れずにいられる目だ。だから他人の良い面を見て、愛すことができる。大事な友人と離れる結果になって淋しいだろうが、お前がこれからもその目を大切に持ち続ければ、いつかまた仲良くできる日がくると思う」

まるで未来を見ているみたいに、遠くの方を見て彼は言った。RPGに出てくる賢者様みたいな喋り方だなとぼんやり思った。


「そんな立派なことが言えるんだからちゃんと学校行こうね……」

彼を見つめたまま呟くと彼は途端に不機嫌な表情になって「最近は行ってるっつーの」と唇を尖らせた。

[ 6/28 ]

[*prev] [next#]
[しおりを挟む]


novel/picture/photo
top



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -