「倉庫の片付けをしてくる」と言った私は手伝いを申し出た彼らの優しさを一蹴し、逃げるように部屋を出た。

ただ、辛くて仕様が無かったのだ。
なにが、と言われれば分からない。
虚無感、焦り、色々な感情がごちゃ混ぜになり、堰を切ったように涙が次から次へと零れ落ちた。自分の意思ではどうにも止められない。
胸がじわじわと締まり、声を押し殺すと鼻の奥がツンとした。
逃げてきたと言っても、いつまでもこうしているわけにはいかない。
そうは思っても涙は止まらず気持ちだけが逸る。

「おい。」

突如響いた声に振り返ると、一瞬目を見開いた左京さんと目が合った。
しまった、と思った私はすぐ様顔を逸らし、今まで何もしていなかった倉庫の片付けを再開するフリをした。

「片付けて埃が舞ってるんでしょうね。目にゴミが入っちゃって、」
「おい。」
「こんな小さい目にゴミもよく入ってきますよね。」

自分でも何を話しているのか理解していなかった。ただ私の口が「何も聞きたくない」とでも言うようにペラペラと言葉を発していた。

「おい。」
「喉にもよくないですし、左京さん出てた方が」

いいですよ、と言うよりも前に腕を力強く引かれ、私の眼前には見慣れた黒のニット。

「黙れ。もう喋るな。」

キツい言葉とは裏腹にその声色は優しく、張り詰めていた涙腺は一気に緩む。
ボロボロと泣く私の背中を、何も言わずポンポンと叩く左京さん。
その優しい手に、最後まで体裁を繕うことはできず一頻り泣き終えた私は「ああ、なんて説明すればいいんだろう」と思いながら眠りに落ちた。



左京さんに慰められる
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