※夢主…久屋家の一番上のお姉ちゃん
「今日ゆき、お母さんと一緒に寝る!」
夕食後、ゆきちゃんが「見たいテレビがあるんよ」とつけたのは、所謂心霊番組やった。ゆきちゃんは怖がりやけどこういう類のものを見たがる。
「ズルいで!そんなら俺も一緒寝るわ!」
「お兄ちゃんまで、みんな甘えたやなぁ。そや、翔くんも一緒に寝よか?」
「え、ええ。ボクゥ、1人で寝れるわ。」
「ほぉか?……お姉ちゃんは?どうする?」
「お母さん、私もう高校生やよ?1人で大丈夫や。」
久屋家のみんなは凄い優しくしてくれはる。けど、ボクの性格上、素直に甘えるなんてことできん。
ほんまは、ちょっと、ほんのちょっとやで?あの心霊番組にビビっとる。
ボクゥ、今日眠れるやろか?
そんなん考えながら部屋で寝る準備をしていると、部屋のドアをコンコンと控えめにノックする音が聞こえた。
「翔くん、起きとる?」
入ってきたのは名前ちゃんやった。
「ごめんなぁ、急に。実はな、お母さんの手前あんなこと言うてしもたけど、ほんまはちょっと恐くて。よかったら、翔くん一緒に寝てくれへんかなぁ、思って。」
名前ちゃんは「嫌やったら断ってくれて全然構へんから。」とふわりと笑た。
「え、ええよ。ボクゥ、一緒に寝たるよ。」
「ほんま?ありがとなぁ。」
そのまま名前ちゃんはボクの部屋に入り、一つの布団に2人で横になった。
こうして誰かと一緒に寝るのは初めてやった。“あたたかい”と思った。
「あんなぁ、翔くん。もし夜中トイレ行きたくなったら着いて来てもろてもええかなぁ?」
「お、おん。ええよ。」
「ほんま?じゃぁ翔くんも行きたくなったら私のこと起こしてな?」
「おん。」
「約束やよ。」
そんな約束を交わしている間、名前ちゃんはずっとボクの背中を軽くトントンと一定の、ゆっくりとしたリズムで叩いてくれ、さっきまで眠れるか心配していたのが嘘のようにボクは眠気に襲われた。
「名前、ちゃん…。」
「おやすみ、翔くん。」
(もっと甘えてくれてええのになぁ。)
こみどと久屋家お姉ちゃん