「研磨ー、お前結婚決まったってなー。おめでと。で、結婚式いつ?」
「え、しないけど。」
「はぁ!?」

結婚の話は家族以外まだ誰にも言っていないのにどこから聞きつけたんだ、と思ったけど恐らく母さんだなと頭の中で片付ける。
こういう時、近所というのはプライバシーもなにもあったものじゃないとつくづく思う。

「なに、なんでやらねぇの?」
「やだよ、人前で注目されるなんて。」
「うわー、名前ちゃん可哀想ー。一生に一度の結婚式なのに、挙げれないとか可哀想ー。ドレス着たいだろうになー。」

俺はゲームの画面に釘付けでクロの方なんか見もしないけれど、クロがニヤニヤとした表情で俺を見ているのを感じる。
勝手に挙げないつもりでいたけれど、やっぱり女の子は結婚式って挙げたいものなんだろうか。

「結婚すんだろ?そんなら名前ちゃんにウェディングドレス着せてやれるの、お前しかいないじゃん。それなのに着せてやんねーの?」

先程のニヤけた表情とは違い、穏やかな顔でそう言ったクロは「じゃぁ帰るわ」とあっさり帰っていった。




「ねぇ、名前はさ、結婚式挙げたい?」

後日、クロの言葉がずっと引っかかっていた俺は、思いきって名前に聞いてみた。

「えっ、挙げないんじゃないの?」
「えっ?」
「いや、研磨くんのことだからてっきり挙げないんだと思ってた。」
「えっ、いや、うん……、でも、名前はどうなのかと思って」

挙げたいのかなと思っていたところへの意外な返答に、段々と尻すぼみになっていく。

「私は、無理にするものでもないと思うし、しなくても大丈夫だよ。」

名前は、我慢している時「いいよ」じゃなくて「大丈夫だよ」と言う。
本人がそれに気付いてるのかは分からないけれど、長年付き合って俺が見つけた名前の癖だ。

「あの、さ。」
「うん。」
「披露宴は嫌だけど、結婚式だけでもしない?」
「えっ」
「俺は、名前のドレス姿見たい。」
「……っ、うん!」

それから事はとんとんと進み、6月末日・大安、無事に式を挙げることができた。
結婚式を挙げようと言った時の名前の笑顔と、今目の前にいる純白のドレス姿の名前は、あの時のクロの一言がなければ見れなかったものかもしれないと思うと、クロに感謝しないとなと思った。



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