部屋で一人テレビゲームに熱中していると、それを邪魔するように携帯の着信音が鳴った。
誰…、と思いディスプレイをちらりと覗けば、そこには「名前」と幼馴染みの名前が表示されていて、急いで通話ボタンを押す。

「もしもし、研磨くん?今大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
「さっきね、アップルパイ焼いたから持って行こうと思うんだけど、研磨くん今お家?」
「うん。」
「今から行ってもいいかな?」
「別に、いいけど。」
「ありがとう、じゃぁすぐ行くね。」

ぷつりと電話が切れ、すぐさまゲームのディスクをホラーへと変える。
数分も経たない内にコンコンと部屋の扉がノックされた。

「研磨くんお待たせ……って、またホラーだぁ。」

母さんにアップルパイを皿に移してもらったのか、アップルパイののった皿と飲み物を二人分のせたトレーを持って名前は部屋に入って来た。

「ごめん、変えようか?」
「ううん、大丈夫。折角研磨くんがやってたんだもん。私のタイミングが悪いんだよ。」

白々しく「変えようか」なんて聞いたけど、それは名前の返事が分かってるから。
優しい名前はゲームを中断するようなことはしない。

「名前もする?」
「ううん、私ゲームできないから見てる。」

名前の焼いてくれたアップルパイを食べながら俺はゲームを再開し、名前は俺の背中から覗くようにテレビ画面を見る。

「もうすぐ怖いシーンだよ。」
「……け、研磨くん、くっついてもいい?」
「いいけど。」

ホラーが苦手な名前は、怖いシーンになると必ず俺の服をギュッと握り背中に隠れる。
その間も俺は勿論画面を見てるんだけど、画面に微かに映る自分の顔は緩みきっていた。
俺が名前とくっつくためにわざとホラーゲームをしているなんて、名前は夢にも思ってないんだろうな。



研磨と幼馴染み
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