「一静!」
春高初日、会場に入ろうと足を進めていたところ聞き覚えのある声に引き止められた。
「おお、珍しいな。わざわざ会いに来るの。」
小さい頃から俺が試合に出る時は必ず応援に来てくれるけど、こうやって試合前に会いに来るのは初めてだ。いつもは試合が始まる頃観客席に現れて、終わればいつの間にか帰ってる。前に一度「いつも試合見に来てくれてありがとな」って言ったことがある。すると名前は「別に。私が応援に行かなかったから負けたとか言われたら嫌じゃん。」なんてぶっきらぼうに言ってたけれど、顔が茹で蛸の様になっていたのを今でも覚えてる。
「これ、あげる。」
ずいっと、小さくシンプルに包まれた物を渡される。
「……何?」
こうやって会いに来てくれたのも、物を渡されるのも初めてで正直驚きを隠せない。その上、次の言葉にとどめをさされた。
「お守り。大事な大会なんでしょ。一静が強いって知ってるけど、念のためあげる。」
外方を向いてぶっきらぼうではあるけど、それでも、顔を真っ赤にしながらも伝えようとするコイツに胸が熱くなった。
「…ありがとな。」
松川と幼馴染