※現代パロディ
目も覚めるような青い空がどこまでも澄み渡る気持ちの良いこんな朝は一層の洗濯日和だった。溜めておいた風呂の水を汲み上げて、男所帯の家に似つかわしいよく汚れた大量の衣服諸々と一緒に洗濯機の中へ放り込むのは毎朝の三娘の仕事だ。料理や掃除はまだまだ勉強中の身だけれど、せめて関索の妻として家族の為にやれることをやろうと三娘は少し荒れてしまった掌で洗濯物を入れた籠を持ち上げた。いくら力に自信があるといってもその細腕は予想外だった重さに微かに震えているし、バランスを崩しかけた足下は心なしか覚束ない。そんな三娘を見かねた大きな腕が、横から籠を軽々と奪っていった。
「こら三娘、無理をするんじゃない」
「あ、お義兄さん、おはよーございまーす」
「ああ、おはよう、洗濯物を干すのなら拙者も手伝おう」
「それは超ありがたいんですけど、お義兄さんまた昨日もお義父さんと一緒に時代劇観てたんでしょ、口調移ってるし」
「そ、それはすまない」
恥ずかしそうに笑う関平と一緒に庭へ出る。立ち込める朝の匂いを肺いっぱいに吸い込めば、目蓋を引き下げようとしていた眠気が吹き飛んでいくのが分かった。普段はあまり気にしない天気予報を信じてついでに布団も干してしまおうかと思うくらいあたたかな陽の光が三娘と関平を照らしている。
「関索はまだ眠っているようだな」
「んー、最近仕事で帰りが遅いからさあ、せめて休みくらいはゆっくり寝かせておいてあげたいんだよね、あ、そこちゃんと皺伸ばさないと跡になっちゃうんですけど」
「……精進致す」
真剣に洗濯物と向き合う関平を眺めながら、やはり兄弟は似るものだと改めて思う。前に関索に手伝ってもらったとき彼はどんなことにだって全力でぶつかっていって、そしてことごとく玉砕していった。つまりこの兄弟はふたり揃って不器用なのである。今も隣の関平から力任せに引っ張ったシャツが破れる音が聞こえた。青ざめる関平へ、取り敢えず苦笑いだけは返しておく。
「関平よ、あまり三娘を困らせるでないぞ、力が余っているのならこちらを手伝うといい」
庭いじりをしていた関羽の助け船に、関平も三娘もほっと胸を撫で下ろす。元気良く駆けていった関平の後ろ姿を見送りながら、三娘もまた積み上げられた洗濯物の多さに気合いを入れ直していた。関索が起きてくるまでに、関羽と関平が庭いじりを終える前に、きちんと朝ごはんを用意出来るかどうか、ただそれだけが心の内を占めている。
自分や家族を大切に思えるこの生活を、三娘はずっとずっと求めていた。そしてようやくその願いが叶ったことに、途方もない幸せを感じるのだ。
急いで台所に戻った三娘を後ろから抱き締める優しい手がある。自分を覗き込む柔らかな関索の表情にいとおしさが溢れた三娘は、その頬へ唇を捧げた。
「おはよう、今日も貴方が生きていてくれて嬉しい」と。