ぱりん、と渇いた音がして、わたしの形をした偽物はばらばらに砕けた。躊躇いもなく切り捨てられるクラウドはきっと誰よりも強くて、強さというのはきっと容赦がないことを指すようなもので、わたしは隣でわたしの手をとるこの人が少しだけ怖く思えた。例え紛い物であってもあれの姿は確かに今あなたと走っている女の子のものなのだとわかっていて欲しい。罪悪を感じる程度の脆弱を持ち合わせているようでは、ここに足をつけたまま動けなくなってしまうことを知っているから、何も言えずにただ走るだけしか出来ないのだけれど。わたしはなんて狡い。ひとりきりじゃ呼吸の仕方も忘れてしまうから、あなたに縋り付いて生きていくしか。
「ここ、あんたの姿をしたイミテーションばかりだな」
「そう、ね」
「あのふざけた道化の男の仕業か、趣味が悪い」
「ケフカ、楽しんでる、わたしとあいつらを戦わせて、人形同士で戦わせて、楽しんでる」
クラウドが急に足を止めるから、わたしは大きなその背に半分ぶつかる形で飛び込んでしまう。赤くなっているだろうわたしの鼻を見てあなたが少しだけ吹き出す。無口な彼が見せてくれる感情の切れ端が珍しかった。
「わ、笑わないで、やめて、笑わないでったら」
「だって違うだろ、ティナとは違う、あいつらはあんたみたいにドジ踏まないさ、面白いこと言うんだな」
身体を抱き上げられて、わたしは咄嗟にあなたの首に手をまわす。しっかり掴まっていろよと耳元で波打つ音が心地いい。笑われた。笑われたのに、恥ずかしくなかった。直ぐ近くにあるあなたの息がわたしに命を吹き込む。わたしはあなたと一緒にいれば何にだってなれる気がするのだ。人間にだって。