好奇心という劇薬


ちょくちょくスーパーに通うようになった。自転車の個人練のあとにスポーツドリンクとか飯とか買いに寄ったりとか、消しゴムとかそんくらいのもんでもあのスーパーに寄った。
そしたらまぁ、「桐谷」さん以外のパートのおばちゃんとかからも顔覚えられて、結構よくしてもらうことになった。

「あら、黒田くん今日もきたのね!桐谷さん、今休憩中なのよー」
「…そっすか」

今声をかけてきたパートのおばちゃんは山田さんだ。めちゃくちゃよく喋るけど、「桐谷」さんとは大学の先輩後輩の関係だっつーんだから、びっくりした。雰囲気違いすぎだろ、って。そんで山田さん本人もそれをネタにしていた。
アクエリアスと携帯食料買いながら、ふと「桐谷」さんに聞きたくても聞けなかったことを田中さんに聞いてみた。

「そういや、桐谷さんって結婚してんスよね?なんか、雰囲気的にお金持ちそうだからパートしててびっくりしたっつーか」

いつもけらけら笑いながらオレにも話しかけてくる山田さんが、固まった。個人的にすげー気になってることだけど、分類的には世間話に入るはずの話題。なのに、言っちゃいけーこと言ったみたいな反応されて、困った。山田さんはちょっと迷ったように、口を開いた。

「今は、…一人暮らしよ」
「…え?でも、桐谷さん、指輪して…」
「あー…それに関しては、あたしからもいえないし…聞かないほうがいいわ。というか、聞かないであげてね。あたしが言ったことも、忘れて」

いや、忘れられねーし、余計気になるっつーか。
結局、「桐谷」さんの休憩終わるまでいるのもなんかおかしい気がして、その日は帰った。
ただ柔らかく笑う「桐谷」さんと、その左手の薬指のこと思い出して、無性に…「桐谷」さんに会いたくなった。

(つーか、オレ、ほとんど桐谷さんのこと知らねーな)

名前と、この間年齢聞いた。少し恥ずかしそうに、「もう31歳よ」って話した「桐谷」さん。思ってたより年上だったなぁとか。その割にはなんかふわふわしってから、あの人年上だけど年上っぽくないよな。…そんで品良さそうで、パートとかしなくても生活できそうな雰囲気あって。左手の薬指に指輪あって、子どもいなくて、今は一人って。

(…離婚したばっか、とかかな)

それなら山田さんがその話するなって言ってくんのも納得だった。そんで「桐谷」さんは、別れた旦那のことまだ引きずってるとか?…そうだったらなんか、すげーいやだけど…まぁ、これオレの妄想だしなって、仮定出すのもやめようと、した。
だけど、どーしても気になって。その日は一人でずっともやもやしてた。

(くそ…そろそろインハイのメンバー決めあんだから、そっちに集中しろっつの)

そう考えることで、気にしないようにした。
そうするためにオレはしばらくスーパーに行くのやめた。




20140414

 

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