2014/04/03(Thu) 12:12 pdl×喰種小ネタ|comment(0) 自分でもどうかしているとは思った。人間のふりをして、学校に通うなんて。それでも三年、なんとかなった。もしも寮生活だったなら、うまくいかなかったかもしれない。 東京のほうが暮らしやすい、とはきく。でも地方で暮らしている喰種もそこそこいる。自分もその一人だ。援助を受けながら、偽の戸籍でなんとかこの学校を卒業できそうだった。 「む!またここにいたのだな、●●!」 屋上の貯水槽の陰に座ってたら、騒がしい男がきた。カチューシャでさらさらな髪をあげて、綺麗に整った顔をおしげもなく晒しているのは、東堂だ。思わず眉を寄せたけど、東堂は気にせずにこっちにくる。 「授業をサボってはいかんだろう?!それにまたジャムパンしか食べてなかったな?!」 「…うっさいなぁ」 昼食後の授業と昼食のことで小言をいいにくるのはいつものことだ。…仕方ないじゃない、人間の食べ物は、喰種の舌にはあわないんだから。だから昼休みあとの授業の前に吐いて、五限目サボるのも仕方ない…話だ。だけど東堂はそれじゃだめだとうんだから、この山神ときたら本当に世話焼きのいい奴だ。 「ほら!●●のために焼きそばパンをとっておいたのだ!」 「……」 東堂は焼きそばパンの封を切る。…きっと人間がかいだら、食欲をそそられるんだろう。だけど喰種の私からしたらソースの匂いはまるで食欲をそそらない。なんかそれ腐ってんじゃね?って、私には思えない。 「さあ、食べるのだ!●●は細いから、貧血など起こしてしまわないか心配だ」 「おかんか」 母親はハトに殺された。ただ、母も昔こんなことを言っていたようなと思うと、大して食欲もそそられないそれに噛みついていた。 広がった味は、食べ物のものとは思えない。喰種の私にとってこれは、毒を食ってるようなものだ。 訓練して食べ方を心得てなければ、口に入れた時点で吐いてしまうのだ。ちゃんと訓練を色々も受けていたから、私は高校生として過ごせた。 「どうだ?おいしいか?」 そこいらの女子より目が大きくてぱっちりしてて、睫毛が長くて。綺麗な目をしている。 「…ん、おいしい」 「そうか!よし、もっと食べるのだ!」 「んぐぅ?!」 容赦なく私の口に焼きそばパンをねじ込んでくる。苦しいし、ちゃんと訓練通りに食わさせろと思った。 思いつつ、頭の片隅では違うことを考える。 (あのさ、東堂) 私が喰種だって知ったら、あんたのその目はどうなってしまうんだろうか。 ▼喰種娘と山神 |