君色、愛色 | ナノ

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その日、朝から体調が優れなかった私は友人に勧められ保健室に向かった。

コンコンと控えめにノックをして扉を開けたが先生はいなかった。

その代わりにソファーに座って携帯をいじっている人がいた。上履きの色から3年生だとすぐにわかった。

その人は私に気が付いてニコッと微笑んだ。

「1年生?」

「は、はい!」

「先生会議でいないんだけど、どうかしたの?」

「朝からちょっと体調が良くなくて休ませてほしいなと思って…先生がいないなら戻った方がいいですかね?」

「大丈夫だよ。熱は?」

「まだ計ってないです」

「そっか。じゃあここに座って」

そう言われて先輩が今までいたソファーに座らせられた。

「ハイ、体温計」

「あ、ありがとうございます…」

「止まったら何度だったか教えてね」

「はい」

そう言って先輩はクルクルと回る椅子に腰かけた。

ほんの数十秒すると体温計はピピピと音をたてた。

「どう?」

「あ、えっと…37度6分です」

「あらら〜、微熱だね」

道理で朝から体調が良くないわけだ。

微熱があると分かって寒気がしてきた。正直頭も痛い。

「大丈夫?」

「大丈夫って言いたいですが、正直きついですね」

「早退する?」

どうしよう…。

うーんと悩んでいると

「無理は良くないよ」

と、言われたので早退することを決めた。

早退を決めると、先輩からベッドに横になりなさいと言われたので素直に従った。

「先生には俺から事情を話しておくね」

「はい。何から何までありがとうございます…」

「いえいえ、どういたしまして」

ニコっと先輩は優しく笑った。

「そう言えば名前聞いてもいいかな?先生に報告する前に君の名前教えてもらわないと報告できないや」

「あ、自己紹介が遅れてすみません。1年の井上沙和です」

「井上沙和ちゃんだね。俺は3年の篠原庵。よろしくね」

「庵先輩…」

「うん。早く良くなるんだよ」

そう言った庵先輩に頭を撫でられた。

その心地よさに私は夢の世界へと意識を手放した。






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