17
その日、朝から体調が優れなかった私は友人に勧められ保健室に向かった。
コンコンと控えめにノックをして扉を開けたが先生はいなかった。
その代わりにソファーに座って携帯をいじっている人がいた。上履きの色から3年生だとすぐにわかった。
その人は私に気が付いてニコッと微笑んだ。
「1年生?」
「は、はい!」
「先生会議でいないんだけど、どうかしたの?」
「朝からちょっと体調が良くなくて休ませてほしいなと思って…先生がいないなら戻った方がいいですかね?」
「大丈夫だよ。熱は?」
「まだ計ってないです」
「そっか。じゃあここに座って」
そう言われて先輩が今までいたソファーに座らせられた。
「ハイ、体温計」
「あ、ありがとうございます…」
「止まったら何度だったか教えてね」
「はい」
そう言って先輩はクルクルと回る椅子に腰かけた。
ほんの数十秒すると体温計はピピピと音をたてた。
「どう?」
「あ、えっと…37度6分です」
「あらら〜、微熱だね」
道理で朝から体調が良くないわけだ。
微熱があると分かって寒気がしてきた。正直頭も痛い。
「大丈夫?」
「大丈夫って言いたいですが、正直きついですね」
「早退する?」
どうしよう…。
うーんと悩んでいると
「無理は良くないよ」
と、言われたので早退することを決めた。
早退を決めると、先輩からベッドに横になりなさいと言われたので素直に従った。
「先生には俺から事情を話しておくね」
「はい。何から何までありがとうございます…」
「いえいえ、どういたしまして」
ニコっと先輩は優しく笑った。
「そう言えば名前聞いてもいいかな?先生に報告する前に君の名前教えてもらわないと報告できないや」
「あ、自己紹介が遅れてすみません。1年の井上沙和です」
「井上沙和ちゃんだね。俺は3年の篠原庵。よろしくね」
「庵先輩…」
「うん。早く良くなるんだよ」
そう言った庵先輩に頭を撫でられた。
その心地よさに私は夢の世界へと意識を手放した。
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