10
「それじゃあ、改めて…」
「「かんぱーい!」」
グラスがぶつかり、注いでたお酒が揺れる。
「ケーキ食べる?」
「俺はまだいいよ」
「そう?じゃあ先に食べちゃうね!」
コンビニの店員さんが、わざわざフォークまでつけてくれた。
ありがとう店員さん。
「いただきまーすっ」
生クリームがふんだんに使ってあるショートケーキ。
うん、甘い。
「おいしい?」
「うん、幸せ!」
「そっか、やっぱり俺ももらっていい?」
「ん、ちょっと待ってね」
袋をごそごそとあさり、もうひとつのフォークを庵くんに差し出した。
「はい、どうぞ!」
「沙和ちゃん」
「どうしたの?食べないの?」
「俺、そっちが食べたいな」
庵くんが指差すそっちを見てみると、私の食べかけのケーキ。
「え、これ?」
「うん、ダメ?」
そんな顔で、庵くんにお願いされると断れない私。
「…いいよ」
庵くんはにこっと笑って、口をあけた。
フォークにケーキを乗せ、庵くんの口に運ぶ。
「おいしい?」
グイっ
「んっ!」
「どう?」
「あまい…」
そっか、とだけ言ってもう一度、唇を塞がれた。
さっきより、長い口づけ。
少し苦しくなって、庵くんの胸を叩く。
「ベッド行く?」
そう聞かれて、私は素直に頷くことしかできなかった。
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