nonstop desire

「超ゼツベイ??」
「あぁ。ついに完成したんだ」

目の前に完成したベイを見せてくるフブキに、「ベイの進化は止まらないなぁ」と思いながらまじまじとそのベイを見る。彼のベイはエンペラーフォルネウス。確かディフェンスタイプのベイだ。どこが変わったのだろう。早速試したい気持ちもあったが、フブキが進化出来たなら私のベイ、マーメイドソルジャーも進化出来るのかもしれない。私は鞄からベイを取り出して、コツンと額に当ててマーメイドソルジャーの声を聞く。

「ねぇ、私たち進化出来るかな?」
「進化出来るわ。名前だもの」
「そうだよね。絶対貴方を進化させてみせるね」

私はベイを額から離す。早くこの子を進化させたい。その思いでいっぱいだ。私はそそくさとベイを鞄にしまうと、手をひらひら振りながら「じゃぁね」と屋上を後にする。
廊下ですれ違うベイクラブの子たちに「祢音さん、もう帰っちゃうんすか?」「今日は教えてくれないの?」と言われるが、「ごめんね。今日用事があって」と謝った。
私は中学1年生の時、ベイブレード世界チャンピオンになり、その1年後BCソルに所属していたフリーにタイトルマッチをかけた戦いに敗れた。無所属でチャンピオンにまで駆け上った私だが、今では普通の高校生活を送っているが、放課後は私が通う高校の隣接している米駒学園でコーチ兼お世話係?として忙しい毎日を送っていた。
家に帰りポストを覗けば、wbba.から手紙が来ていた。

「まーた、来たか」

毎月毎月クリスからまたwbba.に戻ってこないか。という手紙が来ており、正直うんざりしていた。私は今の生活を楽しんでいたいのだ。後輩達が成長していく姿を見届けてあげたいのだ。私は鞄から鍵を出し、玄関の扉を開けると「ただいま」と言い放った。
しん。と静まり返った廊下を歩きながら、リビングに行くとごみ箱にクリスからの手紙を破り捨て、ベイの作業場へと足を運んだ。

「待っててね。今、進化させてあげるから」

ベイを鞄から取り出し、言い放った私は早速ベイの改造へと取り掛かった。
これは赤刃アイガという少年に出会う、数カ月前のお話である。
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