準備を終えた後、私はリビングで亮太くんの帰りを待っていた。
さっきから、早く帰ってきて欲しくて携帯を確認してばかり。
何度目か分からない確認作業をしていると、突然手の中の携帯が震えた。

From:亮太くん
Sub :今から
―――――――――
ライブ終わった〜
今から帰るよ^^

 -END-

私はそんな亮太くんのメールを受け取り、返信した。
それからディナーを温めなおし、テーブルへと運んでいく。

そして、玄関先で待っていると──
ガチャ、と玄関の扉が開く音がして亮太くんが帰ってきた。

『おかえりなさい、亮太くん。お誕生日おめでとう!』
私がそう言うと、亮太くんは一瞬驚いた表情をしたけどすぐに笑顔になって、「ありがとう」と言ってくれた。

テーブルへと案内すると、亮太くんは驚いた声をあげた。
「うわ、これ…全部詩乃ちゃんが作ったの?」
『うん、頑張っちゃった』
「ありがと。…ねえ、食べていい?」

『もちろん。…あ、でもその前に…、メリークリスマス』
「メリークリスマス」

シャンパンをグラスに注ぎ、乾杯をした。
「…じゃ、いただきます」

そう言うと亮太くんはカトラリーを手にして、料理を口に運んでいく。
「あ…、めっちゃうまい…」
『ふふ、良かった』

そして並べられたディナーを綺麗に食べ終え──亮太くんは嬉しそうに笑った。
「ごちそうさま、詩乃ちゃん。美味しかったよ」
『お粗末様でした』

私が亮太くんに微笑みかけると、亮太くんは、そういえばさ、と声をあげた。
「ずっと気になってたんだけど…」
『うん?』
「なんでサンタ服?…って、クリスマスだからだよね?」
『あ……』

亮太くんに指を指され、私は改めて自分の姿を見下げた。
そう、私が今着ているのは女性用のサンタの衣装だ。

シンプルな赤のワンピースで、裾や首には白いファーがあしらわれている。
パニエによってふんわりとスカートが広がり、なんとも可愛らしいサンタ服だ。

『前のクリスマスの時、亮太くんがサンタ服着てて、私も着たかったから着てみたんだけど…』
「…似合ってると思う。可愛いよ」
『ありがとう…』
ストレートに褒められ、心臓が跳ねた。

『去年のクリスマス、亮太くんが“来年詩乃サンタに何お願いしよっかな”って言ってたから、今年のクリスマスは、私が出来る事なら何でもしてあげる』
私がそう言うと、亮太くんは楽しそうに笑った。

「じゃあお言葉に甘えて…詩乃サンタに色々…プレゼントしてもらいましょうか?」
お腹もいっぱいになったし、ね?と亮太くんはいたずらっぽく笑う。
なんだか意地悪な笑みに嫌な予感がして、私は思わず立ち上がった。

『えっと…食器片付けてきてからでも…いい?』
私がそう言うと、スカートの裾をつかまれた。
急に動けなくなり、戸惑いながら亮太くんのほうを見ると、彼はとても嗜虐的な笑みを浮かべていた。

そのまま、ぐっと引き寄せられる。
「俺のして欲しい事…何でもしてくれるんだよね、詩乃サンタさん?」
『え、うん……』
「じゃあ行かないでよ。片付けは後でいいでしょ?」

甘い言葉に胸が疼いて、抗えなくて、私はそっと頷いた。




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