手首を掴まれて亮太くんに引っ張られ、気付くと亮太くんに背を向ける形になっていた。
邪魔だからと纏め上げた髪から、ぽたりと落ちたしずくが私の首筋を冷やす。

「ね…これなら、恥ずかしくないでしょ?」
背後から聞こえてくる亮太くんの声は、まだ悪戯な響きを含んでいたけれど、亮太くんの優しさが伝わった気がした。
本当はまだまだ恥ずかしくて仕方ないけれど、私は思わず頷いた。

『うん…ありがとう』
嘘交じりだけれど、確かにそう言ったら少しだけ落ち着いた気がする。
そのまま、ゆっくりと、亮太くんとふたり温泉を楽しむ。
空を見上げると、都会ではあまり見れない綺麗な星空が広がっている。
そんな中、ゆっくりと露天風呂に入って……

久々の贅沢に力を抜いていると、突然うなじにぬくもりが触れた。

『ひゃ…っ…!』
急な事に、思わず姿勢を正してしまう。
柔らかくて温かいそれは、亮太くんの唇だ。
落ち着いてきたはずの心拍は、一気に加速しだす。

『亮太くん…、何するの…っ』
「…ん〜?」

私とは正反対で、落ち着いていて余裕な亮太くんは、のんびりとしたままだ。
私はこんなにいっぱいいっぱいなのに、彼は余裕で。
少しだけ彼を恨めしく思っていると、後ろでフッと笑う気配がした。

「ね…ドキドキした?恥ずかしい?」
私の答えなんて最初から分かっているはずなのに、いちいち確認してくる彼。
きっと私の後ろで、いつものような笑みを浮かべている事だろう。

『そりゃ…ドキドキするし、恥ずかしいよ…?』
私がそう言うと、また亮太くんの唇が私のうなじに落とされた。

「んや、自分から恥ずかしくないようにしてあげたけど、“全然恥ずかしくないよ”って感じにされると、それはそれでつまんなくってさ〜」

彼がそう言っている間にも、キスの嵐は降り止まない。
うなじ、首筋、肩口へと降りていき、その度に体が小さく反応してしまう。



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