毎朝、ふたりで朝食を。



『ね…翔平』
「ん…?どうした?」

『…翔平……私と結婚してください』
「…!?…ゴホッ、ゲホッ…」


気付けば自然と私の口が動いて、気持ちを彼に伝えていた。
私の作ったお味噌汁を飲んでいた翔平は、突然の私の言葉にむせて咳き込んでしまった。


『…大丈夫?』
そう言って翔平の背中をさする。
「ゴホッ、柚月……」
『う、うん…?』
「…いきなりそんな事言うから…ケホッ」
『…ご、ごめん』


翔平の顔は、照れているのか赤い。
私の頬も、彼につられて熱を帯びていく。

「…柚月」
『…はい』


「そういうのは、男から言うもんだろ?」
『えっ……』


そう言って翔平が箸を机に置き、私の頬にそっと触れる。
どくん、どくんと心臓が早鐘を打つ。


──その時。
視界の端に、壁に掛けてある時計が映った。


『あっ…!もうこんな時間じゃない…!急いで準備しないと…!』
時計の針は、いつも家を出る時刻の30分前。
メイクも着替えもしないといけないので、のんびりしている場合ではない。

『ほらほら、翔平も!早く食べないと蛯原さんに怒られちゃうよ!』
「え…、…あ、あぁ…」
翔平は呆気にとられたように私を見ていたが、ハッと我に返ると急いで支度を始めた。


そして、ふたりして急いで準備して、いつものスーツを着て、家を出る。
いってきます、とふたりで言って、いつもの道を歩く。

「はぁ…なんとか間に合いそうだな」
『そうだね…』


さっきまでの甘い空気はどこへやら。
隣を歩く翔平の横顔は真剣で、仕事モードに切り替えてるのかな?…なんて、思ってたら。


『キャッ……!』

突然、強い力で腕を引かれた。
真剣な光を宿した翔平の瞳がすぐ側まで迫る。

「さっきの事だけど…俺だって、気持ちは柚月と同じだから。…俺から言うまで、待ってて欲しい」

耳に少しかすれたような震えたような翔平の声が入ってくる。
『……もちろん』

私は彼の手をそっと握った。






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