“仁王に彼女が出来た"



そう言った時、
彼女の肩が僅かに揺れたのは、
気のせいじゃない。

でも、動揺したのは一瞬で
すぐにいつもの笑顔に戻る。



「へぇ、そうなんだ!!
珍しい事もあるもんだね」

「…だろ?
結構ご執心らしいぜぃ」

「えー、想像出来ない」



詐欺師も形無しだね。



そう言って、彼女は笑う。

その笑顔が泣きそうに見えるのは
俺の気のせいだろうか。



「じゃあ、その彼女泣かせたら駄目だよって
言っとかなきゃ、ね」

「…ああ」



少しうつむきがちに、そう言う彼女を
どうしようもなく抱き締めたくなった。


…でも駄目だ。

そんな事をしたって
彼女は救われない。

幾ら愛を囁いても
今の彼女には届かない。



「あーあ、
これから毎日バカップルのイチャイチャを
見なきゃ駄目なのかー」



椅子にもたれ掛かりながら
おどけたように彼女はそう言った。



「どっかに、
いい人いないかなー」



俺がいるじゃん。


思わず口をついて
出そうになった台詞を
ギリギリの所で飲み込む。


「丸井も、そろそろ
彼女作ればー?」


選り取りみどりじゃん。



そう言う彼女に
俺は曖昧に笑った。


俺の想いには気付かず
1人苦しむ彼女は、
本当に狡い。

こうやって話した後も
また声を押し殺して
1人で泣くんだろ?


ちら、と彼女を見れば
いつもと同じ笑顔で
俺を見ていた。




きみがそっと
隠した恋情。

(そして、その想いを俺に打ち明ける事は)
(きっと無いのだろう)

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