窓の外はオレンジと紺色が混じりあった色になっていた。
そんな色を見たらどこか悲しくなるのは何でだろう。
私は委員会の仕事で珍しく遅い時間まで学校に残っていた。
廊下を歩いていても、人の気配はほとんどない。
早く帰ろう、そう思って早足で歩き出した時の事だった。
目の前の誰も居ないだろうと思っていた教室から、女子が走って出て来たのだ。
ふと、目線がぶつかった。
あ、そういえばこの子。誰だったかな。記憶を手繰りよせている私をよそにその子は目を逸らして走り去ってしまった。
その子は目を真っ赤にさせていたからこの後泣くだろう。
私がふと、教室の方を見るとその中には鮮やかな赤い髪が目に入った。
そうだ、さっき居た子。
丸井君の彼女だって噂になってた子だ。
答えに気付いた時、丸井君が私の方を見て「見た?」なんて気まずそうに笑ったから私は首を縦に振った。
その日、初めて丸井君と一緒に帰る事になった。
ただ、何となしにだったのだけど。丸井君が一瞬かわいそうに見えたから。
かわいそうなのはさっきの子も同じだ。
「なんつうかさ、俺駄目なんだよ。」
『何が?』
「結構かわええって思ってても、ちょっと嫌な所が見えたら駄目。もうそこで終わり。
何か萎えるっつーか。っつうか何で俺苗字にこんな事話してんだろ。」
丸井君は、私の隣を歩きながらそんな事を言った。
空はもうオレンジ色は消えていて、濃紺のみになってる。
丸井君の表情は街頭に照らされた時だけうっすらと見える。
『潔癖、なのかな。丸井君は。』
「そんな大それたもんじゃねえって。ただガキなだけだろぃ。」
自分でそうやって分かってるんだ。なんて言おうと思ったけど言葉は飲み込まれた。
酷い言葉ばかりを並べる癖に何故この人は悲しい顔をしてるのだろう。
いっぱい泣くだろうさっきの子の方がかわいそうなのになあ。
そんな事を考えながらポツリ、ポツリと私達が歩いて行く時。
丸井君が足を止めたから私もつられて止まった。
大きな目が私を捉える。
強い引力が発生してるみたい。
成程、これに色んな女の子が引かれちゃうんだ。
『丸井君、何でそんな悲しそうな顔するの?』
「俺、からっぽじゃん。なんとなく今そう思った。」
そうだね、丸井君は酷いし、勝手な事しか言わない。
空っぽだからなんだ。
あー、まずい。まずいよ。
丸井君みたいな人は、遠巻きに関わらない方がいい。
『何で私に、そんな事…』
「さあ、何でだろ。苗字の好きなように考えたんでいいぜぃ。」
丸井君はそう言ってニヤリと笑った。
酷い人が優しい顔で笑うと死ぬほど魅力的らしい。
愛しちゃって、ハニー