白く染まった景色。
マフラーのすきまから息を吐くと、白い空気となって零れた。
粉雪が舞っていて、私の肩に落ちてくる。
そんな小さな情景も今は虚しく感じた。
「…、ブン、太…」
(名前…、俺ら、別れよう)
(…え)
(俺、お前をいっぱい不安にさせてきた。いっぱい泣かせちまった。俺じゃお前を幸せにできねえ…)
(ブン、太)
(好きだ、でも、1番幸せになってもらいたいのはお前だから。…幸せになれよぃ)
(待って、よ、そんな、勝手、に…)
(…じゃあな…、わりい)
下手な作り笑いで誤魔化したブン太は、私に後ろ姿を見せて走っていった。
さっきまでの出来事を頭の中でリピートしているうちに、頬には雫が伝っていた。
泣くつもりではなかった。
勝手に流れてしまった。
いつの間にか立ち止まって、電柱によでかかるようにして肩を震わせた。
私の幸せって何。
それは貴方とずっと一緒にいることだけ。
ごめんブン太、これ以上幸せになんかなれない。
これ以上の幸せなんか、もう、一生感じられない気がする。
大型バスの音も、煩いバイクの音も、クラクションの音も、信号の音も、みんなみんななくなったように
私の涙だけが雪と一緒に溶けて混ざって、零れ落ちていった―――
(息することもままならない)
(そのくらい胸が苦しかった)