名前先輩なんかいなくなっちまえ。


名前先輩はテニス部のマネージャー。

最近わかった事がある。
なんかこう、イライラするんだ。
先輩を見ていると。


幸村部長とニコニコ話してるんじゃねぇとか
真田副部長に怒られてへらへらしてんじゃねぇとか
柳先輩と楽しそうに本の貸し借りしてるんじゃねぇとか
柳生先輩にハンカチをプレゼントしてんじゃねぇとか
仁王先輩にからかわれてバシバシ叩いてんじゃねぇとか
丸井先輩にお菓子貰って笑ってるんじゃねぇとか
ジャッカル先輩が仕事手伝ってくれたときにお礼なんか言ってるんじゃねぇとか

俺の事を心配してくるんじゃねぇとか。

だってアンタは好きな男がいるんだろう。
素敵な素敵な運命の人がいらっしゃるんだろう。

俺の前で幸せそうにそいつの話をするなよ聞きたくねぇし。

何か、先輩を見てると落ち着かねぇんだよ。

アンタは俺のものにはなってくれないくせに。
俺が一番大切みたいに言っておきながら他の男と楽しくやってんだろ。

…ムカツク。

1人でちょっと泣きそうになって、慌ててタオルで拭いて誤魔化した。
今は部活に集中しなければ。



「赤也ー!お疲れ様!ね、今日ファミレス寄っていかない?」

だから、好きな奴がいるのに俺を誘うな。

「行きます!」

そして何で俺は即答してるんだ。

「あはは、赤也は名前の犬みたいだね。」
「ちょ、部長ヒドイッスよ!」
「言い得て妙だな。」
「柳先輩まで!」
「いいじゃんかー、赤也、お手!」
「わん! って違ぁぁう!」
「あははははは!」

そんな楽しそうに笑ってんじゃねぇよ。


「あーこれも食べたいけどこっちも食べたい!どっちがいいかな!」
「んなの自分で決めて下さい!」
「赤也何にした?」
「俺はミックスグリル!」
「ふむふむ…これも美味しそう!同じのにしようかな…。」
「真似は無しッスから!」
「えーケチー。わたしはじゃあカルボナーラにしようっと。」

メニューを子供みたいに眺める名前先輩。
楽しそうだな、ああもう。

でも好きな男とやらと一緒に出かけたらもっと楽しそうな顔するんだろうな。

そう思ったらやっぱり辛くなった。
先輩は俺の心臓をめちゃめちゃに壊そうとしているんだきっと。

「あーかーやーくーん?」
「うわぁ!何スか!」
「わたしといるときに余所見なんていい度胸ではないか…そういうお前はステーキ一切れ取り上げな!」
「あー!俺の肉!」

もう、先輩、やめて。
それ俺が食べかけじゃん。
間接キスじゃん。
なんも意識されてねぇんだな。


「ね、この後どっか行かない?」
「…明日も早いし帰りましょうよ。」
「えー珍しいな。いつもならやりぃ!って喜ぶのに。何かあった?」
「別に…。」
「むー…何かあったら、わたしに相談しなさいよー?わたしは赤也のお姉ちゃんなんだから。」

…おねえちゃん。

わかってるわかってるよ名前先輩が俺を弟分にしか思ってないことくらい。
それでもはっきり言われるのは辛かった。

「…俺は、アンタの弟じゃない。」
「わかってるって、でもさ、」
「アンタのそういうところがウザイんだよ!何だよ姉気取りか?!アンタに俺の何がわかるってんだよ!」

思わず大きい声を出してしまった。
シン…とする店内。
それでも気にならなかった。

「…スイマセン、帰ります。」
「え、ちょっと、赤也、」
「すいません。」

何に対して謝ってる?
わかんなかったけど、もうここにいたくなかった。

…俺は弟じゃねぇんだよ。
アンタが好きなんだよ。
だから苦しいんだよ。

ファミレスから出て1人で暗い道を走っていこうとした。
夜道に女の人置いてくって、俺どんだけ最低な奴。
しかも相手は好きな人。

もう最悪だと思いながら走り出そうとしたら首根っこの部分をガシッと掴まれた。

「ちょっと待てやバカ也!」
「ぐえっ?!」
「何勝手に切れてるの、1人でセンチメンタル気取りやがって。」
「だ、だって俺は、」
「…アンタほんとにバカ。もうバカとしかいいようがない。救いようの無いバカ。」

さすがにカチンときて言い返そうとしたのだけど。

「そんなおバカなやつには、わたししかいないんだよね?」

あまりに自信満々に言われて言葉を失った。

「それ、どういう意味、スか…?」
「察しろバーカ。」

この短時間で俺は何回バカだと言われなければならない。
それでも文句を言ってる場合ではなかった。

「先輩!」

ダッシュで逃げ出した先輩を追いかけなければ。

レギュラーの足、舐めてもらっちゃ困りますからね。

自称センチメンタリスト
(結局から回ってただけじゃん!)


End

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