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「有り得ない」
乱暴に障子を開きながら、開口一番そう言った。
軽そうなポニーテールが揺れる。大変ご立腹である。
「どうした」
そうせ面倒臭いことなんだろう。そう思いつつも吐き出させてやるべく問う。忙しいので書類から目を離すことは流石に出来ないが。
「聞いてくださいよ」
「だからどうした」
普段さばさばしているがこういう時の沖田は面倒だ。こういう時ばかりはコイツも女なんだなあ、と思う。
口をあひるのように尖らせた沖田は、刺々しい口調のまま不満を吐き出す。
「近藤さんが私に見合い話持って来たんですよ。しかも幕臣!」
有り得ない!と沖田は喚く。そんなに酷い話だろうか。
首をかしげると疑問に思ったのがバレたようで「呆れた!」と声が飛んで来た。俺まで巻き添えで非難されるパターンだ。
「お固いところに勤めてるお堅い性格した保身野郎なんて真平御免ですよ」
「ブーメランじゃねえか」
まあ、真選組に関したは設立経緯が複雑なので保守的とは言い難いかもしれないが。
「だいたいね、私は見合いで結婚する気はないんです」
結婚自体はしますと言いたげな口ぶりに思わず顔を見れば、不満気な瞳が俺を刺した。痛い。
「結婚自体はするのか」
「独身貴族はアンタでしょう」
まあ、それはそうだが。
俺も近藤さんに見合い話は持って来られるが、のらりくらりとかわし続けている。
お前もそうすればいいだろう、と指摘すればそうしてますよ、とまた不満気に。
「それでも推してくるから苛々してんでしょうが」
ああ、近藤さんにごり推しされてたのか。ご愁傷様。
「断りきれなくなったら俺と結婚するか」
冗談めかして言ってみる。
冷たい視線で突き刺して来るかと思ったのだが、意外にも沖田は顎に手を添えて考え始めた。え、前向きに検討する感じ?
そうして目を伏せたかと思うとちらりとこちらを見て、目を細めた。
「まあ、最終手段ですよね」
思ったよりも前向きに検討されていた。
「……そんなに見合いが嫌か」
近藤さんが持ってくるならそう悪い条件でもないだろうに。とは思うものの、言ったら軽蔑の眼差しで見られそうだったので黙っておくことにした。
初期土は銀さんの軽さ強めのイメージ