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いっそ白状してしまえたら、とは何度となく思っていた。
それを邪魔していたのはプライドだとか、赤だとか、タイミングだとか、そういうもので。でも小さく色々積み重なって、揺らして、ついに溢れた。ひとつひとつのきっかけも、最後のきっかけすら覚えちゃいない。記憶にあるのは限界が来たことだけだ。
「美咲」
「名前で呼…………猿?」
いつもの調子で食ってかかってきていた美咲が、途中で戸惑った。ああ、そんなに変な顔してるのか。美咲に気付かれるって相当だな。
「美咲」
無性に泣き出したくなった。どうしてこの想いは伝わらないんだろう。言葉にしたところで、正確に伝わるかは微妙だ。それでも溢れる。
「お前以外はいらない」
金も、名声も、赤も、青も、仲間も、何もかも。美咲だけが隣にいるなら、それでいい。
赤のことを出すと単純な美咲は赤が侮辱されたと怒って俺の自白を無下にするだろうから、あえて言わなかった。
「美咲」
しっかり見据えていたいのに、視界がぼやける。名前で呼ぶな、とは言わないのか。優しい美咲。
「……猿」
戸惑う、美咲の声。顔はわからない。目から流れる液体が頬を伝う。気持ち悪い。
「俺をっ、見ろよ!」
こんなに憎まれることをしたのに、それでも美咲の視界に留まり続けるには足りない。俺にこれ以上どうしろってんだ。
やけくそで本音をぶちまけてやったらいよいよ美咲は困惑。はっ、せいぜい困れ。困って、俺のことだけ考えてろ。
そんな思いが届かないのはわかりきっているけれど、少しでも思いが届けばいい。そんな思いで、静かに美咲を見据えた。
映画公開前に好き放題妄想しておこうと