曖昧ミーマイン

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団長には邪気がない。にこにこと何考えてんのか常にべったり笑みを貼り付けている。何か楽しい、とかじゃなく笑顔が基本表情なんだろう。まあ、それはいい。

「……何ですかね」

無遠慮なそれに耐えかねて、ついつい言ってしまった。無視を決め込むつもりだったってのに、忍耐力がなさ過ぎる。いや、でもちくちくと無言のそれが刺さり続けてたらそりゃ居心地が悪い。仕事に集中出来ない。手伝えとは言わないからせめて邪魔だけはしないでもらいたい。

「何って?」
「とぼけんな。さっきから刺さってんだよ」

直接攻撃じゃないだけまだマシだが、そういうこっちゃない。

「まあまあ、俺には構わずに」

うずうずした瞳で、あどけなさを色濃く残す男が言う。出来ることなら相手になってやりたいところだが、まともに相手したら十中八九死ぬから無理だ。コレを一人にしておくのはちょっとどころではない脅威だ。手綱が取れるとは思っちゃいないが、せめてブレーキの真似事くらいはしておいてやりたいと思う。コイツから言わせりゃ余計なお世話なんだろうが。

「阿伏兎、難しいこと考えてない?」
「何でそう思うんです」
「眉間に皺が寄ってるから」

とんとん、と団長は自分の眉間を軽く叩く。あんまり眉間に皺を寄せてると癖になるぞ、とかアンタがそれを言うか。誰のせいで眉間に皺寄せる羽目になってると思ってやがる。アンタは一回くらい俺に飯を奢るべきだ。

「そう思うんなら少しは自重してもらいたいもんですけどね」

俺はアンタの尻拭いに日々忙しくて、眉間に皺が寄るのもきっとそのせいだ。これくらいでコイツが改善するわけないよなあ、とか思いながら言ってみたので期待はしてなかったが、やっぱり奔放さが改善されることはなさそうだった。

「まあまあ、頑張ってよ」

いつもとは微妙に違う笑みで、有無を言わせぬ力を作る。纏わりつくそれは鬱陶しいはずなのに、諦念を抱かせるのだから不思議だ。

「……アンタに言っても無駄なことはわかってますよ。だからその目、やめてください」
「好きなくせに」
「はあ?」

寝言は休み休み言ったらどうだ、すっとこどっこい。
なんて言葉は、宥めるようなそれにより口に出すことは叶わなかった。


眼球の中心点と見ている対象とを結ぶ線


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