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佐藤君は優しい。それが佐藤君の常識人たる所以でもある。佐藤君は、いっそ残酷なくらいに優しい。
「佐藤君はさ、轟さんのことあんまり話さないよね」
好きなんだから、あの時は可愛かったとかちょっとくらいあってもいい気がする。元々そういう話が苦手なタイプではあるんだろうけど、それにしたって何も言わないにも程がある。
別に俺にくらい言ってくれてもいいのに、とか思ったりもする。まあ、考えてることはなんとなくわかるからわざわざ話してもらわなくても筒抜けなんだけど。
「聞きたいのかよ」
「たまにくらいは話してもいいんじゃない?」
轟さんの惚気話を聞いて苛々している佐藤君を見るのも楽しいけど、あんなのが毎日じゃストレスも溜まるでしょ。たまにはどこかで発散してもいいんじゃないの?あ、俺をフライパンで殴ったりするのはストレス発散か。
話してもいいよって言ってるのに佐藤君は渋い顔をする。恥ずかしいんだろうか、とか思ってたんだけどどうやら違ったらしい。
「自分がされて嫌なことは人にはしないようにしましょうって習っただろ」
「へ」
好きな人から惚気を聞く。確かに苦痛だ。でもだいたいにして惚気は聞くだけでも苦痛なので、佐藤君の真意は図りきれない。
俺が佐藤君を好きなことを、佐藤君が気付いているとは考えにくい。だけど、言い回しからして否定はしきれない。意外と聡かったりするからなあ。
「……佐藤君、どこまでわかってる?」
「?何の話だ」
あ、多分わかってないな。それであれか。
「いや、なんでもないよ。佐藤君は優しいね」
本当に、優し過ぎて嫌になる。
公式がさと→やちなのでこういう話ばかりに