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「俺ってドジですか……?」
スポーツドリンクをちびちびと飲みながらタオルで汗を拭う立向居はわかりやすくへこんでる。原因はさっきの特訓だろう。
魔王・ザ・ハンドを会得するためには怒るのは一番いいだろうってことでカチンと来るような悪口を言ってみたわけだが、結果は逆効果だった。立向居は怒るどころか落ち込んだ。
持ち直したとばかり思っていたのに、まだ引きずっていたらしい。ちなみにドジと罵倒したのは俺だ。
「立向居はドジじゃねえだろ」
「……でも、さっき綱海さんが」
「急に悪口言えって言われて思い付かなかったんだよ」
立向居は優しくて素直で努力家で、いい奴だと思う。そんな奴の悪口なんて浮かぶはずもなくて、ありきたりな言葉で間に合わせた。まさかここまで傷付けてしまうとは。
「お前の悪いところとかぱっと浮かんで来ねえし」
「……ありがとうございます」
さっきまで「ずーん」という効果音が入りそうなくらいにへこんでたくせに、今は照れて視線を少し落としている。そういう素直なところは立向居のいいところだ。
とりあえず持ち直してくれたようで良かった。今度からこういう状況になった時は気を付けよう。立向居は傷付きやすいのだと、今回で学んだ。
「俺、魔王・ザ・ハンド会得出来るよう頑張りますね」
「おう、あと一息だしな」
俺達の作戦は失敗だったが、途中までは上手くいっていた。あとはどうコツを掴むか、ということだけだと思う。立向居ならきっと出来る。そこは心配してない。俺も全力でサポートするわけだし。
「まあ、ドジな立向居ってのも可愛くていいと思うけどな」
立向居は何気に何でもそつなくこなす。だからドジな立向居ってのもそれはそれでいいと思う。
そう思ったから素直に言ってみたら、立向居が茹で蛸になっていた。
「ど、どうした?」
「いえ、なんでもないです……」
なんでもないわけあるか。
だが立向居が理由を話すことはなく、スポーツドリンクの残りを一気に煽った。
「ドジ」って言った時の273の冷たい目プライスレス