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友情と言うには重い。
「……」
いつものように、巡回のふりをして美咲を捜す。
自覚はあるが、俺の世界は酷く狭い。昔から人と接するのが嫌いだった。そう言うと暗いと言われるが、他人の言うことなんてどうだっていい。
俺の世界は十代半ばに完成した。その時が最も理想的で、それ以上もそれ以下もいらない。美咲以外はいらない。
「あ」
美咲を見つけた。
特に目的もないみたいでぷらぷらとしている。俺に遭遇するなんて思いもしてないんだろう。本当に、馬鹿だ。
美咲を視界に入れた途端に、眼球が美咲に固定されて動かなくなる。それこそ盲目的に。後は美咲が俺だけを見るなら、俺の世界は完成する。世界を完成させるために、俺はわざわざ禁句を口にする。
「みぃーさぁーきぃー」
ぴくりと、美咲の眉が跳ね上がった。ああ、掛かった。無視すりゃいいのに、毎回律儀に引っ掛かる美咲は本当に馬鹿だ。
「猿……テメー、どの面下げて俺の前に来やがった!」
「どの面って、俺は生まれた時からずっとこの顔だけどなあ〜?」
わざと苛立ちを誘う口調で言う。そうすると、美咲の額に青筋。おお、怒ってる。そうやって我を忘れて、俺しか見えなくなればいい。
ああ、そういえば盲目的になるのは恋なんだったか。
「ぶっ殺す!」
「はっ、出来るもんならな」
美咲は俺しか見ていない。これで、俺の世界は完成した。
通常運転
2013.01.22