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「ひっじかったさんっ!……あれ?」
「総司か」
元気に土方さんの元へ訪れてみれば、土方さんは何か文をしたためていた。隠す様子がないところを見るに、機密文書や俳句ではないらしい。ちょっと残念。
「何書いてるんです?」
興味本位で覗き込んでみる。堅苦しい報告書だったりしたらつまらないなあ、と思っていたのだが、報告書ではなかった。
「……文通ですか?」
全てを読んだわけではないが、取り留めのない単語ばかりが並んでいた。季節の移り変わりがどうとか。意外と情緒のある人だからそんな話をしていても意外ではないけれど。さて、一体誰とそんな文をやり取りしているのだろうか。不思議に思っていたら土方さんはそれを察したらしく、あっさりと教えてくれた。
「平井殿と一緒に娘さんが来ただろ」
「ああ、私が鉄君を捕まえてた時の……」
そういえばそんなこともあった。そうやって以前を思い出していると、連鎖的に土方さんの行動を理解した。
「あー、そういえば文を送るとか言ってましたね、娘さん。続いてるんですか」
「送れば返って来るからな。こっちから流れ切るわけにもいかねえし」
そう言って溜息。
手紙を書くこと自体は嫌いではないのだろうけど、よく知らない相手と文通を続けるのは疲れるのだろう。隊士が知ったら羨ましがりそうだ。美人だったし。
「土方さん、モテモテですねえ」
「……お前が出てればお前が捕まってただろうがな。歳も近そうだ」
「いや、娘さんは年上の渋さにときめいたんだと思いますよ。私に渋さはないですから、とてもとても」
娘さんは惹かれるべくして惹かれたのだと思う。
「私と一緒ですねえ」
惹かれるべくして惹かれた。本当にそう思ったからそう言ったのに、土方さんは呆れた顔をする。あ、軽口だと思われてる。
できているか否かはご想像にお任せ
2012.07.16