曖昧ミーマイン

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俺の相棒はとてもモテる。そのモテっぷりと言えば老若男女問わずで、もう何か特殊なフェロモンでも振り撒いてるんじゃないかと思う。
理解出来ないわけじゃない。寧ろ鳴上に惹かれる気持ちはよくわかる。鳴上の周りには人が集まる。考えてみれば何の不思議でもないことで、よくわかる。

「花村?」

何気なく見ていたら、不審に思われたらしい。

「俺の顔に何かついてるか?」

そう言って鳴上は自分の顔をぺたぺたと触る。でも何も見つからなかったようで、首を傾げた。まあ、何もついてないんだから見つからないのも当たり前だ。

「いや、何も」
「そうか」

鳴上は俺の言葉を全面的に信じて手を戻す。何もないと言ったのに見ているのもおかしいから、鳴上から視線を外す。

「……なあ、鳴上」
「何だ?」

鳴上がこっちを見たのがわかった。でも俺は目を逸らしたままで続けた。鳴上のことだから、目を見たら何か察するかもしれない。考え過ぎかもしれないけど鳴上にはそれくらい警戒しても損はない。

「例えば色んな奴からモテまくってる子がいたとして、その子に振り向いてもらおうと思ったら……お前、どうする?」
「どうって……」

戸惑われた。
モテる男が何を戸惑うのか。モテるからにはモテるテクニックがあるんだろう。
期待して待っていたけど、鳴上は困惑したままだった。まさか全部無自覚でやってるんじゃないだろうな、なんて考えていたら案の定そうらしかった。何を言っているのかわからない、とばかりに首を傾げている。

「その子がいくらモテてても好きな人に振り向いてもらえてなかったら意味がないんじゃないか?」

見当違いの答え。だけど鳴上の答えに妙に納得したりもした。確かにその通りだ。どれだけ好かれてるとか、あんまり関係ない。

「……それもそうだな」

考えるだけ無駄だったのかもしれない。
流石鳴上というか、ちょっとした言葉だけであっさり納得した。鳴上のすごいところだと思う。何と言うか、言葉に力がある。

「経験者は語る、って?」
「さあ、どうだろうな」

あっさりとはぐらかしたその言葉も、どうしようもなく引力を持っている気がした。


そんな感情。


御題提供元「家出

2012.03.05

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