曖昧ミーマイン

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「……」

じっと僕は虎徹さんを見る。虎徹さんは気付いていない。気付かれたいわけじゃないからそれでいい。
デスクワークが苦手らしい虎徹さんはPCを前にして難しい顔をしているに違いない。後ろ姿を眺めながらそんなことを確信する。

「……」

虎徹さんは、能天気なようでいて結構根が深い。何かを抱え込んでいても誰にも悟られないように振る舞うしそれが出来てしまうからタチが悪かった。相棒である僕はそれを真っ先に見破るべきで、でもそれはなかなかに難しいことで。

「虎徹さん」
「んー?」

呼び掛けに応じて振り返った虎徹さんは疲労困憊。そんなにデスクワークが苦痛なんだろうか。

「疲れてるみたいですから一旦休憩にしませんか?コーヒー買って来ましたし」

ぶらぶらと手に持っているコーヒーを見せれば虎徹さんはそれを受け取ってくれる。
最近更に視力が落ちたのか眼鏡ごしでも虎徹さんはぼやけて見えた。クリアな視界でも虎徹さんは見えないことが多いのに視界がぼやければますます虎徹さんが見えなくなってしまう。
受け取ったコーヒーを飲みながら虎徹はぐるぐると椅子を回転させる。子供みたいだ。

「虎徹さん」

僕が呼べば虎徹さんはぴたりと回転を止めた。さっきまでの回転で酔ったのか「うえ……」と気持ち悪そうな声を漏らしている。やっぱり子供だ。

「仕事が終わってから少し付き合ってもらえませんか」
「いいけど何に?」
「眼鏡を新調したいんです。度が合わなくなってきたみたいでもうついでにフレームも変えようかと」
「なるほど。俺を誘ってくれるようになるとはバニーちゃんも成長したなあ」
「いつも付き合わされることの方が多いですからたまには付き合ってもらわないと」
「お、言うねえ」

何故か上機嫌になった虎徹さんは一気にコーヒーを煽ると立ち上がる。ついでに空になっていた僕の分も持って。

「じゃあ今日はバニーちゃんと出掛けることを励みに頑張るかな」

カップをごみ箱に捨ててから虎徹さんは大きく伸びをする。
そんな虎徹さんの抱え込んでいることを少しでも共有したくて、見えないことはわかっているけど目を細めてみた。


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デレバニ。
眼鏡は度が入ってる設定にしたけどなんか伊達な気がしてる。

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